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【オートファジー】   生命を守るしくみ



吉森 保(著)
大阪大学 特任教授。2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典氏と共にオートファジーの研究に携わり、この分野の第一人者としてオートファジー関連の研究を続けている。
※詳しいプロフィールを知りたい方はこちらから→「吉森研究室」



本書はオートファジーを解説する本です。

吉森先生と大隅先生の研究にまつわるご苦労や素晴らしいチームワーク、子弟愛などを盛り込んで物語のように進んでいきます。

ノーベル賞授賞式や記念講演の話、オートファジーとは何かという基本概念から、疾病との関連性、誰にも相手にされなかった研究が急速に注目を集めていく過程などが書かれています。専門的な内容は少々難しくて読みにくい面もありますが、研究室での数々のエピソードは誰もが楽しく読むことが出来る構成になっています。

図解が非常に多いのも特徴です。知らない単語がたくさん出てくるため迷子になりやすいという側面もあります。そこで私は基本的な単語をピックアップしながら、混乱しないように概要をメモしながら読みました。

今回は自分の読書のためにまとめた内容をこのブログにUPするという形になります。オートファジーを理解するための幹の部分だけ抜き出していますので、研究室での会話や雰囲気、実験の詳細に関してはほとんど触れていません。興味のある方は本書を手に取って読んでいただくしかないと思います。

💬 は解読が難しかった点や感想、印象的だったエピソードなどをピックアップして書いています。


  第1章 細胞の中の世界  


《オートファジー》
ギリシャ語のauto (自己)と  phagi (食べる)を合成した造語。

1950年、ベルギーのクリスチャン・ド・デユーブが細胞は自己の成分を自分で食べて分解しているのではないかと考えて命名した。日本語では「自食作用」と訳されるが近年はオートファジーが浸透してきているため辞職と混同されやすい自食はほとんど使われていない。

オートファジーは細胞の中で起きている現象なのでまず細胞とその中の構造について解説する。


《細胞は生命の基本単位》
①細胞は1個で生きていける
②細胞は分裂して増える
③物質の合成や分解など生存に不可欠な様々な化学反応が、細胞の中で行われている
④細胞1個の中に生命の1個体、ヒトであればヒト1人を作るのに必要な遺伝情報が全て入っている

以上の理由から細胞は生命の基本単位と考えられている。


《代謝》
③の生体内で起きる化学反応を代謝という。


《ゲノム》
④の遺伝子情報セットのことをゲノムと呼ぶ。細胞1個から生物1個体を作ることは技術的には可能で、既に哺乳類でも実証されている。


《オルガネラ》
細胞を電子顕微鏡で見ると膜でできた袋がたくさん詰まっている。それらの袋をオルガネラ、日本語では細胞小器官と呼ぶ。

細胞も膜でできた袋なので、袋の中に袋がある。

オルガネラにはいろいろな種類があり、それぞれが人間の社会における工場や発電所、病院、ゴミ処理場などの役割を果たしている。


《タンパク質》
タンパク質は全て細胞の中で作られる。ヒトの場合、数万種類のタンパク質があってそれぞれ違う役割を果たしている。



細胞の中ではとても複雑な化学反応が起きていてそれが生命活動を支えている。オルガネラが作られたのは、簡単に言うと化学反応を効率よく進めるためである。

細胞の中ではタンパク質の合成と分解のように逆方向の反応が同時に行われることもある。膜でできた袋(オルガネラ)があれば、逆方向の反応の場を分けることもできる。


《メンブレントラフィック》
オルガネラは独立して働いているが、互いに物質のやり取りも行っている。

オルガネラ間の物質輸送システムをメンブレントラフィックという。メンブレンは膜、トラフィックは交通という意味である。

《小胞輸送》
 いくつかある輸送システムの中の基本形。
①送り手であるオルガネラの膜の一部が膨らむように突出し、輸送する物質を含んだ状態で、根元がくびれちぎり取られて小さな袋(輸送小胞)になる。
②受け手であるオルガネラに①が運ばれ、膜表面の分子を介して相手を認識して、正しい相手であれば結合する。
③輸送小胞①の膜と受け手の膜が融合し、運んできた物質が受け手側の内部に放出され輸送が完了する。


メンブレントラフィックで重要な働きをしている生体膜は、非常に可塑性に優れ、自由自在に形を変えることができる。

生体膜にはさまざまなタンパク質がはめ込まれている。それらのタンパク質は、①細胞やオルガネラなどが相手を認識して結合する、②膜を貫通して物質を輸送する、③化学反応を起こすなど、さまざまな働きをしている。


オートファジーは、メンブレントラフィックの一部である。

メンブレントラフィックの主要な経路は、分泌経路、エンドサイトーシス経路、生合成経路、そしてオートファジー経路の4つである。

《分泌経路》
ホルモンや抗体、分解酵素といったさまざまなタンパク質や神経伝達物質などが、この分泌経路によって細胞の中から外へ運ばれている。

《エンドサイトーシス経路》
細胞の外から中へ栄養、情報分子、病原体などを細胞質に取り込む。細胞膜の一部が内側に突出し、輸送するものが入った小さな袋(輸送小胞)がちぎり取られエンドソームと結合して運んできたものを渡す。外から運ばれてきた物質の多くは最終的にリソソームに送られる。 
※細胞質とは細胞の内部で「細胞核」以外のすべての領域のこと 
 
《エンドソーム》
物質の選別が行われ行き先が決められる。オルガネラの一種。
 
 《リソソーム》
エンドサイトーシス経路の終着点。さまざまな分解酵素を含んでいて物質の分解を担っている。タンパク質はリソソームで分解されてアミノ酸になる。そのアミノ酸はエネルギー源として使われたり、新しく作られるタンパク質の材料になったりする。
 
《生合成経路》
ゴルジ体(物流センターの役割を担うオルガネラ)とエンドソームをつなぐ。
 
リソソームで働くタンパク質を運ぶのが主な役割。

《オートファジー経路》
細胞の中にある物質を隔離膜で包んでオートファゴソーム(新しいオルガネラ)を作り、分解を担うリソソームに運ぶ経路。

《オートファゴソーム》
まず「隔離膜」と呼ばれる構造が作られる。
隔離膜は生体膜でできた袋がつぶれたようなもので、最初は丸い座布団のような形をしている。
伸びながら曲がって、皿、丼、壺と形を変えていく。
物質を包んで、壺の口を閉じて球形になり新しいオルガネラ(オートファゴソーム)を作る。

※オートファゴソームは、二重の生体膜で包まれた特殊なオルガネラである。 

 
オートファゴソームは微小管というタンパク質でできたレールの上を運ばれて
リソソームに出会うと融合し、
リソソームの酵素でオートファゴソームが分解され再利用される。
タンパク質はアミノ酸に分解され、そのアミノ酸は再利用されるというリサイクルシステムになっている。



ここまでの内容を読みながらまとめたのが下の図です。かなり大雑把に書いてありますので参考になるかどうかわかりませんが一応ここに載せておきます。
吉森研究室にもっと詳しい図解と解説があります。



💬 第1章は1995年、ドイツ留学から帰国した吉森先生が大隅先生と出会うシーンから始まり、オートファジーの研究へと進む過程や自己紹介へと続きます。
 
次に細胞とは何かという基本的なことに入っていくのですが、私は高校の生物で習ったであろう簡単なことも忘れてしまっていたため、ネットで調べながら読み進めました。

オートファジーの説明に入ると引き込まれていきましたが、隔離膜について「つぶれた」という表現があったため既存のオルガネラが破れたものと勘違いをしてしまいました。何かおかしいと気づいて何度か読み直して、ネットで調べてみて、隔離膜は突如現れる物質でまだ解明されていないということがわかりました。 

章の終わりにコラムがあります。ラバーダック(アヒルの形をした玩具)の話です。吉森先生は最初は学会でオートファジーの発表をしてもなかなか興味を持ってもらえず、名前も覚えてもらえなかったそうです。
 
日本人の名前は外国人にとっては発音も難しい。そこで目印として講演のスライドの隅にラバーダックの写真を入れていたところ、「アヒルのやつだ」と覚えてもらえたというエピソードです。今では誰も彼もがアヒルを買ってきてくれてアヒルで研究室が溢れているそうです。



  第2章 オートファジーの発見、暗黒時代、そして夜明け  

オートファジーが発見されたのは1950年代である。オートファジーの名付け親であるクリスチャン・ド・デユーブは1974年にオルガネラの構造と機能に関する発見によりノーベル生理学・医学賞を受賞している。

オルガネラの解析が進む中でオートファゴソームだけが謎のまま取り残され、オートファジー研究の暗黒時代は長く続いた。

オートファジーに関する論文はほとんど出ず、発見から30年近い年月を経てようやく夜明けが訪れる。そのきっかけを作ったのが大隅先生である。

※この後は、大隅先生の大学時代、留学、帰国後の研究の様子などを語りながら進みます。大隅先生は留学の最後の一年で酵母を用いたDNA複製と細胞増殖制御の研究へと思い切ってテーマを変えました。そして帰国後、酵母研究からノーベル賞につながる論文が生まれ、14種のオートファジー必須遺伝子(ATG)を発見しました。

《酵母》
酵母は、単細胞生物で、細胞の表面から芽のようなものが出てそれが大きくなり、分裂して増殖する出芽酵母と、細胞の中央がくびれて分裂して増殖する分裂酵母がある。

実験に使われたのは出芽酵母である。

酵母は、約2時間で1個の細胞が2個になる。哺乳類の細胞の場合、1回の分裂に24時間ほどかかる。増殖が早いと効率よく実験を進めることができるので、酵母は使い勝手が良い。

ヒトなど哺乳類の細胞と基本的な内部構造は同じで共通する機能も多いことから、酵母はモデル生物として深く研究され、さまざまな実験に使われている。

《液胞》
液胞は植物細胞や酵母で発達しているオルガネラで、中にいろいろなものをため込み、また分解酵素を含んでいる。



オートファジー研究はこのあと、酵母から哺乳類研究へと進んでいく。

💬 この章はオートファジーが発見された1950年代の話から始まり、大隅先生が酵母で大発見をされた話へとつながっていきます。大隅先生のプロフィール的な話を挟みながら、実験方法のかなり細かい部分まで書かれているため少々難解な内容になっています。メンデルが行ったエンドウの交配実験の話まで出てきます。本書はヒトのオートファジーを理解する目的で読んでいますので、一つひとつの実験については概要を軽く把握する程度で十分ではないかと感じました。

 


  第3章 哺乳類オートファジーの大海原へ  

《ホモログ》
ホモログとは異なる生物種が持っている遺伝子で塩基配列が類似しているもののこと。同一の祖先種に由来する遺伝子が進化の過程で変化した可能性が高い。

タンパク質についてもアミノ酸配列が類似しているものをホモログと呼ぶ。

酵母のオートファジー必須遺伝子タンパク質のホモログが哺乳類で見つかれば、哺乳類もオートファジーに関連している可能性が高い。

《LC3》
ラットの脳から発見された新しいタンパク質MAP1-LC3は、酵母のオートファジーに必須なAtg8の哺乳類ホモログであることが明らかになった。

LC3によって様々な解析が可能になり、オートファジー研究を大きく前進させる原動力となった。

💬この章のLC3の解説部分では、タンパク質とGFP(緑色蛍光タンパク質)をつなげて光らせて蛍光顕微鏡で観察する方法が出てきます。難しい内容ですが、この章の詳細が完全に理解できなくてもこの後の読書に大きく問題は出てこないと思います。最後にコラムとしてノーベル賞授賞式の様子が書かれています。



  第4章 三つの主要機能  

オートファジーの研究は急速に進み、オートファジーが生体にとって極めて重要で多岐にわたる機能を持つことがわかってきた。

現在までわかっている主要な機能は、栄養源の確保 ・代謝回転・有害物の隔離除去の3つである。

栄養源の確保
自己を食べることで栄養を得るという役割(栄養源の確保)は、酵母からヒトまで全ての真核生物に共通したオートファジーの最も基本的な機能である。

オートファジーは飢餓状態で細胞の成分を包み込んだオートファゴソームが急にたくさん出現して活発になる。

多細胞生物の場合、脂肪細胞のように栄養を貯蔵する働きを持つ細胞もあって多少の飢餓は耐えられるがそれでもオートファジーによる栄養源の確保は大事である。

代謝回転
飢餓状態ではない普通の状態では、細胞の中にあるタンパク質の1~2%をオートファジーで分解しアミノ酸にし、出来たアミノ酸を材料に新しいタンパク質を作っている。こうした細胞成分の新陳代謝を専門的な言葉で、代謝回転と呼んでいる。

食物から摂取するタンパク質は胃腸で分解されアミノ酸になり、体内に吸収される。そのアミノ酸はエネルギー源として使われ尿素として排出される。タンパク質の材料になるものもあるがほんの一部である。食物から摂取したタンパク質を分解したアミノ酸だけでは到底材料が足りない。

 細胞の中にあるものを分解して同じものを作ることで、何日かで細胞の中身が全て入れ替わり、新しい状態が保たれる。

オートファジーが起きず、中身の入れ替えができないと、細胞の機能に不具合が出て病気になってしまう。

オートファジーが担う新陳代謝とは細胞内の成分の入れ替えである。細胞の入れ替わりに加えて細胞の成分も入れ替えられている。それが細胞の恒常性維持、ひいては健康維持に必須であることがオートファジーの研究で明らかになってきた。

この細胞内部の代謝回転は脳の神経細胞や心臓の心筋細胞のように一生の間にほとんど入れ替わらない細胞では特に重要である。

《有害物の隔離除去》
オートファジーは自己成分を分解するだけではなく、細胞内に入ってきた細菌などの有害物を隔離して除去する機能も持っている。

隔離除去の対象となる細菌はさまざまであり、さらには細菌にとどまらず、ウイルスなど広範な病原体が駆除されることが明らかになっている。

オートファジーを利用して増殖する病原体や、コロナウイルスのようにオートファジーを妨害するタンパク質を持っているウイルスも存在する。



オートファジーは生活習慣病を含む数多くの疾患の発症を抑制していることがわかったことで、多くの研究者が興味を持ち、オートファジー分野が急激に大きくなったのである。


💬 オートファジーによって抑制される疾病が具体的に書かれています。ダイエットの視点で語られることの多いオートファジーですが発がん抑制の機能もあるそうです。まだこれから新たな機能が見つかる可能性があるとのこと。難病といわれている疾病も治る可能性があるとしたら夢のある研究だと素人の私でも感じます。

研究者の世界というのはわからないことだらけですが、本書を読む限りでは非常に細分化されて専門性が高く、少しでも違う研究をしている研究者とは接点がほとんどないようです。この章では、吉森先生の奥様の伝手で歯周病の研究者と共同研究が始まったというエピソードが紹介されています。

コラムには漫画「トリコ」が出てきます。漫画を通してオートファジーを知る人が意外と多いため科学雑誌に論文を掲載するより週刊ジャンプにに載せたほうがいいのかもしれないという少し柔らかめの内容が脳の休憩にもなりホッとします。



  第5章 選択的オートファジー  


《ゼノファジー》
オートファジーによって細菌など外から細胞内に入ってきたものを分解する隔離除去のこと。自己の成分ではなく、外から入ってきたものを食べることから、ゼノ(異物)ファジーと呼ばれている。

《選択的オートファジー》
外から取り込まれたものは、細胞膜の袋(エンドソーム)の中に入っている。オートファジーによって分解される物質は多岐にわたるが、すべてのエンドソームをオートファジーが分解してしまうとエンドサイトーシス経路が機能不全になるため、細菌が入ったエンドソームだけを選んで分解していると考えられる。

エンドソームの中の細菌はリソソームに運ばれると酵素で分解されてしまう。そのため細菌は分解されないように毒素で膜に穴を開けて脱出する。脱出した細菌は細胞質で増殖し病気を引き起こす。
 ※第4章 有害物の隔離除去の項でA群連鎖球菌を用いた実験の詳しい説明あり

穴の開いたエンドソームを選んで分解していることが、いくつかの実験によりわかっている。

《リソファジー》
穴の開いたエンドソームという観点から考えると、他のオルガネラも穴が開くと除去されている可能性がある。

外から運ばれてくるものの中には、シリカやコレステロール結晶、尿酸結晶など刺激性の分子も含まれていることがあり、リソソームは穴が開くこともある。

穴が開いてリソソームの中にある分解酵素が外に出ると危険である。穴が開いたリソソームもオートファゴソームが包み込み正常なリソソームと結合する。

このように損傷して穴の開いたリソソームを除去するシステムをリソファジーと名付けた。

💬 この章はコラムも面白いエピソードもなく淡々と進んでいき、かなりややこしい説明になっています。どのようにして細菌が入ったエンドソームを見分けているのかという話なのですが、おそらく穴の開いたエンドソームであれば細菌か否かにかかわらず分解しているのではないかという結論です。

 


  第6章 疾患に対抗するオートファジー  

オートファジーにより細胞の中身の作り替えがうまくいかないと、細胞機能に支障が出て細胞死や疾患を引き起こしてしまう。

しかし細胞には寿命があり古い細胞は死に、新しい細胞に入れ替わっているため作り替えがうまくいかなくても大きな問題にならないことも多い。

一方で、脳の神経細胞や心臓の心筋細胞は、ほとんど入れ変わらず生まれてからずっと使い続けなければいけない。

オートファジーによる分解が滞ると、古いものや壊れたものがどんどん溜まっていき、やがて細胞は死んでしまう。

《神経変性疾患》
神経細胞が死んで、脳機能が低下してしまう疾患がいくつもあり、まとめて神経変性疾患と呼ばれている。

 細胞内のタンパク質蓄積が共通する特徴として見られ、オートファジーによる分解が滞っていることが推測される。

《凝集タンパク質》
凝集して塊を作りやすいタンパク質がある。このタンパク質は細胞毒性を持つため、それが蓄積すると細胞の機能が低下して疾患の原因となる。

オートファジーは、凝集タンパク質を選んで分解することで、それが引き起こす疾患の防御機構として働いている。
→パンチントン病、アルツハイマー病の発症に関わる凝集タンパク質を分解して、発症を抑制してくれている可能性が高い。

オートファジーは、損傷したミトコンドリアを除去することでも発症を防いでいる。
→パーキンソン病

《責任遺伝子》
変異が起きると特定の疾患を引き起こす遺伝子をその疾患の「責任遺伝子」、あるいは「原因遺伝子」と呼ぶ。

疾患を発症させる遺伝子があるのではなく、誰でも持っている遺伝子に変異が起きると発症する。

遺伝子疾患とは、遺伝子の変異が原因で発症する疾患の総称である。遺伝という言葉のせいか、親から子へ遺伝すると思われがちだが、遺伝しないものもある。

《損傷リソソーム》
オートファジーが起きないと、損傷したリソソームを除去できなくなり、症状が悪化することが明らかになっている。

《腎疾患》
血液に溶けている尿酸は腎臓で取り除かれて尿と一緒に排出されるが、結晶化した尿酸は腎臓に蓄積していく。

尿酸結晶は、エンドサイトーシスによって腎臓の細胞の中に取り込まれ、リソソームに運ばれる。尿酸結晶はトゲトゲしているためリソソームを傷つけ、中にあった分解酵素が細胞質に広がって細胞の機能が低下し腎障害が生じる。


《生活習慣病》
2型糖尿病を起こす膵島(すいとう)アミロイドポリペプチドや、動脈硬化を起こすコレステロール結晶もリソソームを傷つけることが知られている。

オートファジーは、他にもさまざまな生活習慣病と関わっていることがわかってきている。
 
💬 この章はさまざまな疾病について書かれています。脳の神経細胞や心臓の心筋細胞は、ほとんど入れ変わらないため特にオートファジーが重要になるというのは衝撃的です。アルツハイマーの原因がタンパク質の蓄積であるという話は最近よく聞くことですが具体的な理論は初めて知りました。オートファジーという言葉がダイエットという視点から独り歩きしてしまっていることは残念です。

 

  第7章 オートファジーを止めるルビコン  

《脂肪肝》
脂肪肝は肝臓の細胞に脂肪が蓄積して肝障害を起こす。生活習慣病の一つである。

大量の飲酒が原因のアルコール性と飲酒が原因ではない非アルコール性があり、非アルコール性脂肪肝の患者の方が多い。

非アルコール性脂肪肝は、過食、特に脂肪分が多い高エネルギーの食事を摂りすぎると摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り肝臓の細胞に脂肪がたまって起きる。

脂肪肝では、オートファジー機能が低下する。

《ルビコン》
多くのオートファジー関連タンパク質はオートファジーに対して促進的に働くが、ルビコンは、オートファゴソームとリソソームの融合を抑制するタンパク質である。
 
脂肪肝の研究から、高脂肪食の過剰摂取によってルビコンが肝臓で増加しオートファジーの機能が低下することが明らかになっている。
 
脂肪肝は遺伝子疾患ではない。この研究結果は遺伝子変異がなくても食生活という環境要因によってオートファジーが低下して疾患が引き起こされることを示している。

 

生活習慣病の中には脂肪肝のほかにもオートファジー機能の低下が確認されている疾患がある 。脂肪肝と同様に高脂肪食の過剰摂取などの食生活が原因になっているのかもしれない。

ルビコンをターゲットにすることで、オートファジーが関わる疾患の予防や治療が可能になるのではないかと期待されている。

特定のタンパク質が作られないようにする方法は2つある。
・ノックアウト~遺伝子を破壊してしまう方法
・ノックダウン~遺伝子からタンパク質を作らないようにする方法

ルビコンの合成を阻害し機能低下を防ぐことができれば、治療薬を作ることができると考え研究を進めているがなかなか難しいのも事実である。そこで、ルビコンと結合してその働きを阻害する低分子化合物の開発も進めている。

ルビコンの働きを阻害する薬ができれば、脂肪肝だけでなく、オートファジーの機能低下によって発症する様々な疾患の治療薬になる可能性がある。

💬 ルビコンは驚くべき働きをするタンパク質ですが、オートファジーが暴走すると危険なのでブレーキ役のタンパク質があるのは当然という考え方もあるそうです。 暴走を防ぐ機能まであるとは人体とは完璧な構造になっているのだと感心しました。
 
オートファジーの働きと疾病との関連がわかれば本書を読む目的が達成されたことになりますので1章と6章、7章は絶対におさえておきたいポイントだと思います。

前半の章のように研究室の様子や面白いエピソードは出てきません。実験の具体的な方法など難しい内容も多くて少々退屈するのも事実ですがルビコンが出てきて目が覚めた感じがしました。 コラムがないのが残念です。

 
 
  第8章 健康寿命を延ばす  

健康寿命
寝たきりや認知症など健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を健康寿命と呼んでいる。

日本の平均寿命と健康寿命との差は、男性で約9年、女性で約12年。この期間は日常生活に制限のある不健康な状態で過ごしていることになる。

ただ長生きするのではなく健康寿命を延ばす必要がある。老化のメカニズムを解明し、老化に伴って発症する疾患の予防や治療に役立てようとする研究が盛んに行われている。

寿命延長経路
こうすると寿命が延びるということがさまざまな実験から知られているが、それらは専門用語で寿命延長経路と呼ばれ、主なものが5つある。

カロリー制限
1食のカロリー、あるいは食事回数を減らすと寿命が延びる。ただし生命の維持に必要なカロリーは摂取しなければならない。

②インスリンシグナルの抑制
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンである。食後に血糖値が上昇すると、それに反応して膵臓からインスリンが分泌される。

インスリンが細胞の表面にある受容体に結合し、その情報が細胞内に伝えられると、細胞は血液中のグルコースを取り込み、エネルギー源として利用する。

このインスリンシグナルは糖の代謝を調整し、血糖値を一定に保つ働きを持つ重要なものである。

しかし重要だからインスリンシグナルは多い方が良いかというとそうではなく、ある程度抑制した方が寿命が延びる。

③TORシグナルの抑制
TORはリン酸化酵素で、アミノ酸やグルコースなどの栄養源が増えると活性化され標的分子にリン酸を付加することを通して、タンパク質の構成や細胞の増殖を制御している。

TORシグナルも抑制すると寿命が延びる。

④生殖細胞の除去
生殖と寿命は逆相関の関係にあり、生殖を盛んにすると寿命は短くなる。生物としては次の世代を作ってしまえば不要ということなのだろう。次世代を作らなければ長生きする

⑤ミトコンドリアの機能の抑制
ミトコンドリアは細胞のエネルギーを作っているオルガネラである。当然生きていく上で欠かせないが、ミトコンドリアのエネルギー産生をある程度抑えた方が寿命が延びる。


これらの寿命延長経路は相互に関連性がなく独立している。

①のカロリー制限は、軽い飢餓状態に相当する。飢餓状態になると細胞はフォートファジーによって自己の成分を分解して栄養源を確保する。カロリー制限時によってオートファジーが活性化される。

②から⑤に関しても、オートファジーが活性化することが明らかになっている。


《ルビコンと老化現象》
年をとるとオートファジーが低下するが、ルビコンをなくすと、加齢に伴うオートファジーの低下が起きず、寿命が延長されることがわかっている。またさまざま実験結果は、ルビコンがなくなると老化現象が軽減することを示している。

高齢者に発症しやすい傾向がある神経変性疾患についても、ルビコンをなくすとその症状を抑制できることが明らかになっている。

《寿命延長の鍵》
寿命延長経路の5つには共通点があり、全てでオートファジーが活性化されている。一方、何もしなければ、加齢に伴ってルビコンが増え、その結果オートファジーは低下する。

つまり、今日の鍵を握っているのはルビコンということになる。

遺伝子工学の技術を使うと、特定のタンパク質を全身で働かなくすることはもちろん、任意の臓器だけで働かなくすることもできる。最も治療が伸びるのは脳でルビコンをなくした場合だった。

脳が寿命の決定に関わっていると考えている研究者は多いが、そのメカニズムはわかっていない。

《オートファジーを促進する食品成分》
普段から、オートファジーが低下しないようにすることは大事だが、病気になる前からオートファジーを活性化する医薬品を長期間飲み続けるというのは副作用の問題もあり現実的ではない。

天然の食品成分であれば、医薬品ほど効果は大きくないかもしれないが、安心して長期間摂取できる。

《スペルミジン》
オートファジーを活性化する天然の食品成分のうち代表的なものがスペルミジンである。

特に多く含まれるのは、豆類や発酵食品である。味噌や醤油、チーズにも多く含まれている。

イタリアの町で800人を対象に行われた食事調査によれば、スペルミジンの摂取量が多いほど、心不全などの心血管疾患になりにくい傾向があるという。

免疫細胞のB細胞は加齢に伴って抗体を作りにくくなり、オートファジーの低下が原因だと考えられている。老化した人の免疫細胞にスペルミジンを投与したら、抗体の産生量が増加したという報告もある。免疫機能が高まれば、病気にかかりにくくなる。

老化して、オートファジーが低下している免疫細胞でもオートファジーを活性化でき、抗体産生能力を回復できたということは、老化は不可逆的な現象ではない可能性を示している。

💬 本書では、食事の回数についての言及はありません。1食のカロリー制限あるいは食事回数を減らすという表現になっています。Youtubeで吉森先生の名前で検索するとオートファジー関連の動画がいくつか出てきます。動画の中では、1日3食、腹八分目が推奨だが2食にすることで食べる総量が減るならば3食に拘らなくてよいというような表現でした。食事回数を減らして空腹からドカ食いしてしまうのなら逆効果だとい注意喚起だと思います。

本書を読んでみると巷にあふれているオートファジーの情報とはかなり違っていました。

読書で正しい情報に触れることは大事です。オートファジーに興味を持ったなら最初に読む本として本書は最適だと感じました。


 







 記憶の科学】
 しっかり覚えて上手に忘れるための18章   





   リサ・ジェノヴァ(著)

著者はハーバード大学で神経科学の博士号を取得した神経学者であり作家でもある。世界各地で講演を行い多数のメディアに出演。TEDトーク「アルツハイマー病を予防するためにできること」は800万回以上視聴されている。


本書はちょっとした物忘れなど誰もが日常経験している身近な出来事を具体例として提示しながら非常にわかりやすい言葉で書かれています。今まで読んだ脳科学や神経科学の本の中で一番読みやすい本と言っていいと思います。


構成は次のようになっています。


第1部、どのように記憶するのか


第2部、なぜ忘れるのか


第3部、記憶力を伸ばすもの、妨げるもの



多くの面白い具体例が紹介されていますが、このブログでは第1部と第2部の要点をまとめていき、その都度レビューとして( 💬 のマークの部分です )気になった内容を付記したいと思います。具体例はピンポイントでいくつかピックアップする程度になります。


実験方法などの詳細や具体例の全貌を知りたいかたは、実際に本書を手に取ってみてください。




それでは、早速「はじめに」から入っていきます。



  はじめに   




あなたは記憶をフル活用している。人生の大切な事実や瞬間が数珠つなぎになり、あなたの人生という物語とあなたという個人のアイデンティティが創られている。


記憶があることで、自分が誰でこれまでどんな人間だったかという感覚が保てる。


だが、記憶は完璧からは程遠く不完全極まりないものだ。それは、そもそもそういう初期設定になっているからである。


私たちの大半は明日になれば今日経験したことの大部分を忘れてしまう。


覚えていることと忘れてしまうことを分ける条件は端的に言えば人間の脳は意味があることを覚えておくよう進化したということ。


意味がないことは忘れるのである。


本書を読めば記憶がどのように形成され、どのように呼び出されるかがわかるようになるだろう。






第1部 どのように記憶するのか




1. 記憶の作り方入門


頭の中にあるどの記憶もあなたが経験したことに反応して脳が物理的変化を遂げた結果である。


あなたは今日という日をまだ経験していない状態から、一日を過ごした状態へと移り変わる。そして今日あったことを覚えておくためには、あなたの脳は変化する必要がある。


見たり、聞いたり匂いをかいだり味わったり触れたりした別々の体験が互いに結び付くことによって時間が経っても思い出せる記憶となるのである。


元々無関係だった神経活動がつながり1つのパターンを形成する。このパターンは神経細胞(ニューロン)に起きた変化という形で維持される。


記憶の形成は、4つの基本的な段階を踏んでいる。


1つ目が、記銘(符号化)

知覚したり注意を払ったりした光景と情報、感情、意味などを脳が捉えその全てを神経回路用の言語に翻訳し直すこと。


2つ目が固定化

それまでつながりのなかった神経活動を互いに結合したパターンへとつなげること。


3つ目が保持(貯蔵)

神経活動のパターンがニューロンの持続的な構造的化学的変化によって、一定期間維持されること


4つ目が、想起(検索)

つながった神経回路の活性化によって学習したり経験したりした事を思い出し、再生できるようになること。


意識的に思い出せる長期記憶を作り出すためには、4つの段階が全て機能しなくてはならない。


脳の異なる部位に生じたこうした断片的な情報を海馬が一つにつなぎ合わせ、想起可能な神経回路を作り上げる。


その神経回路が刺激を受けると、記憶として体験されるのである。


しかしできた記憶は海馬にとどまるわけではない。視覚、聴覚、嗅覚、触覚、運動はそれぞれ個別の脳領域にマッピングする。


記憶は関連する情報をつなぐ神経回路という形で、脳内に物理的に存在しているのである。


💬 本書のなかでニューロンは詳細には説明されていません。簡単に表現すると下図のようになります。




ニューロン(神経細胞)は、脳や脊髄などの神経系を構成する基本単位となる細胞です。電気信号や化学物質を使って、体中の情報をやり取りする「情報伝達」に特化した役割を持っています。
 
ニューロン同士は直接くっついているわけではなく、わずかな隙間(シナプス)を空けてネットワークを形成しています。

本書では当たり前のように 「海馬」や「ニューロン」という用語が使われています。このような用語の解説はありませんが、記憶のメカニズムに関しては分かりやすく説明されていますのでご安心ください。

「海馬」や「ニューロン」は誰もが知る用語となりつつあるのかもしれません。

少しわかりづらい文章が続いていますが、基本的な脳の仕組みを解説しているため仕方がない と割り切って読むしかありません。次の章から面白くなります。


2. 注意を払おう


もし覚えておきたいことがあるなら、何はさておき、いま起きていることに「気づく」必要がある。


気づきには、知覚(視覚、聴覚、嗅覚、触覚など)と注意の2つが必要になる。


記憶は目の前の景色や音声を途切れることなく記録し続けるビデオカメラとは違う。


記憶として記録し、保持できるのは注意を払った対象だけだ。つまり覚えておきたかったらまずは注意を払わなければならない。


💬 注意を払わないと記憶に残らないというのは、日々経験していることです。著者が立体駐車場で自分の車を探せなくなってしまった体験談が書かれています。遅刻しそうで慌てていたので駐車場所に全く注意を向けていなかったために起きたことです。意外と「忘れる」ことと「記憶に残らない」ことを混同してしまっているかもしれません。忘れやすくなったのか、注意力が低下したのか。どちらにしてもこれは加齢による変化が加わって起きてはいますが、あくまでも正常な老化であるということです。


3. 今この瞬間の記憶


今この瞬間に情報を意識にとどめておく力をワーキングメモリー(作業記憶)という。


ワーキングメモリーは常に稼働している。何であれたった今経験したり注意を払ったりしたことをその場で使うわずかな間だけ記憶しておく機能だ。


電話番号を忘れずに意識内に留めておけるのはワーキングメモリーを使っているから。スマホやコンピュータに入力するまでのわずかな間、電話番号やパスワードを忘れずに意識内に留めておけるのはワーキングメモリーを使っているから。


ワーキングメモリの容量は驚くほど小さく、15秒から30秒の間で覚えておけるのは7個プラス2個の情報だけ。


しかし電話番号は10桁ある。この10桁の電話番号がワーキングメモリ領域に収まるのはなぜか。それは3個のまとまりに分けて、独特のリズムに乗せて口にすることが多いため情報を保持する際の助けとなっているからである。


また、声を出したり心の中で何度も反復することにより、ワーキングメモリ内領域にある情報を長く保持することができる。

その後、重要だと思った情報はワーキングメモリの一時保管スペースから海馬へと送り込まれ、ニューロンによってつなげられ、記憶へと変化する。


💬 普段はほとんど気にとめていないのですが、本を読むことも文章を書くこともワーキングメモリのおかげで出来ているということです。少し前の文の記憶がなければ何を読んでも意味が通じません。だからといって読んだ内容のすべてを記憶しているわけではないと考えると分かりやすくなります。30秒程度で次に入ってくる情報と入れ替わってしまうそうです。意外と短いというのが正直な感想です。音節の長さや意味付けによってどのくらい記憶保持が可能かテストできる問題が載っていますが、残念ながら日本人にとってはすべてが難しく感じてしまって、あまりテストの意味を成していないように思います。

 

4. マッスルメモリー


注意を払われ意味があるとみなされると、現在という瞬間が長期間持続する安定した記憶として固定化される。


長期記憶には3つの基本的なタイプがある。


①情報の記憶(意味記憶)→海馬で固定化される


②出来事の記憶(エピソード記憶)→海馬で固定化される


③物事のやり方の記憶(筋肉の記憶マッスルメモリー)海馬は全く関与しない。大脳基底核と呼ばれる脳の部位で一つにつなげられる。


マッスルメモリーは運動スキルや物事をどう遂行するかという部分に関する記憶のこと。


練習を何度も繰り返すことでそれまで無関係だった複雑な一連の動作がつながり、一つの滑らかな運動として行えるようになる。


正確なパターンが記憶されれば、どうやって行うかをいちいち意識して考えなくても流れるように素早くより的確に実行することが可能になる。


何であれ、繰り返し練習すればそれによって脳が変化する。




5. 脳内ウィキペディア


意味記憶は学習した知識や自分の人生や世界に関して知っている事実だ。脳内のウィキペディアと言ってもいいだろう。


この情報は学習時の細かい状況を思い出さなくても想起できる。それは個人的な「いつ」「どこで」と切り離された知識であり、特定の人生経験に属さないデータである。


ブダペストはハンガリーの首都だ→意味記憶(情報の記憶で特定の時間軸に縛られない)

ブダペストに行ったときのことを覚えている→エピソード記憶(個人的な過去の記憶)


意味記憶にはあらゆる個人的なデータも保管されている。誕生日、名前、住所、電話番号、生年月日などなど脳内に保管されるデータは全て意味記憶である。


長期間保持する意味記憶の形成には学習と反復練習が必要で情報を保持しようという意図的な目的意識がある場合が多い。


💬 身近な具体例として、著者が毎日訪れるスターバックスの話が出てきます。カウンターに近付くだけで著者がいつも注文するチャイティラテをバリスタが作り始めます。かなり複雑な組み合わせなので、簡単に暗記できるようなオーダーではないそうです。このバリスタは50人くらいのお客さんのカスタムオーダーを覚えているとか。お客さんの顔と飲み物との関連付け、そして毎日の反復によるものです。

顔と名前を覚える方法も書かれています。キャシーという女性に紹介されたら、握手するときに「お会いできて光栄です、キャシーさん」と名前を声に出して言う。さらにしばらく経ってから「さっき会った女性の名前は?」と自分自身をテストすると記憶保持の助けになるとのこと。意外と相手の名前を声に出していないかも、というのがこの章での気づきでした。 


6. エピソード記憶


エピソード記憶(人生で起きたことに関する記憶)はあなたが覚えている自分史、人生経験の「いつ」「どこで」に関する思い出であり、あなたの過去へのタイムトラベルだ。


私たちは幼児期に起きたことの記憶をほとんど保てない。エピソード記憶を固定化し想起する能力は、脳内の言語の発達と密接に関わっているからである。


何が起きたかを逸話として語り、後日思い出し共有できるような「まとまり」のある物語へと作り上げるには、言語を操れるだけの解剖学的構造と神経回路が欠かせない。


また、エピソード記憶は日々の生活の一部になっているようなありふれた出来事は覚えておくことができない。


感情と驚きは扁桃体と呼ばれる脳の部位を活性化する。扁桃体は刺激を受けると海馬に強力なシグナルを送る。そこで脳はあなたの経験を取り巻く文脈の詳細な情報をキャッチし、一つに結びつける。

最も意義深いエピソード記憶がひと続きになって、あなたの人生という物語ができる。そうした一連のエピソード記憶全体を「自伝的記憶」と呼ぶ。

記憶の内容は、どんな人生の物語をあなたが紡ぐかによって変わる。人は自らのアイデンティティーや世界観を満足させるような記憶を貯蔵しやすい。


※より多く覚えておきたい場合には、

・ルーティンからはみ出そう

・デバイスから目を離して顔を上げよう

・感じよう

・記憶を蒸し返そう(定期的に回想する)

・日記をつけよう



💬 エピソード記憶の大半は15歳から30歳までのあいだに起きた出来事である場合が多いそうです。レミニセンス・バンプ(記憶のこぶ)と呼ばれる現象とのことで、これはこの時期に初めての経験が多いからだそうです。この章は納得感のある内容でした。幼少期の記憶が残っていないのは言語の発達と関係があるという話は以前にも聞いたことがあります。思春期は急激に語彙数が増える時期でもあり急に自分とは何者なのか考え始めるということを考え合わせてみても言葉は重要であると思います。とにかく今まで漠然と精神論的に語られてきた人生の起伏が脳の機能から説明がつくというのは面白いことです。


感情を伴う経験は記憶に残りやすいという具体例がいくつか提示されています。記念日などの夕食のメニューが何だったか詳細に答えられるが、その翌日の食事を思い出すことは難しい。この例は非常に分かりやすいと思います。




第2部 なぜ忘れるのか




7. 起きたことの記憶は間違っている


エピソード記憶は事実の湾曲や追加や、省略や加工や作話やその他の過誤に満ち満ちている。


起きたことの記憶は、記銘→固定化→保持→想起という記憶プロセスのどの段階においても、記憶の書き換えや誤りの対象となりやすい。


そもそも記憶の形成プロセスに取り込めるのは自分が気づき、注意を払ったものだけであり、後に想起できるのは切り取ったいくつかの側面だけである。


そこには自分の眼鏡を通した自分の興味に合致したリテールしか含まれていない。


さらに、形成されたばかりで記憶がまだ固定化されず長期記憶となっていない期間だと、感化や書き換えの影響を極めて受けやすい。


本で読んだり、人から聞いたりしたこと、映画、写真、連想そのときの感情、他者の記憶、あるいは外部からの単なる暗示によって変わることもある。


固定化された記憶であっても想起するたびに私達は高い確率で記憶を変えてしまう。


記憶を思い出すとき私たちはビデオテープを再生するのではなく、ストーリーを再構築する。今では手に入るが当時は知らなかった情報や文脈や視点に照らし合わせて、記憶のそこかしこを省略しあれこれを再解釈し、その他を湾曲させてしまうのである。


新たな情報をでっち上げ、記憶の空隙を埋めようとすることも多い。


過去に関する記憶は現在の気分にも影響される。


こうしてエピソード記憶を思い返すたびに、たいていの記憶は作り直されることになる。変更されたバージョン2.0の記憶を再固定化し再貯蔵するのだ。


これはMicrosoftのWordで上書き保存をクリックするのに似ている。


💬 まったく経験していないことまで覚えていると思い込んでしまうこともあるそうです。偽の記憶が作られるかどうか調べる実験のことが書かれています。結構な確率で偽の記憶が作られてしまうことは興味深いことです。私は「記憶は進化する」と長年考えてきました。思い出すたびにそのときの感情に応じて記憶が変化するのは誰もが経験していることですが、自分に都合のよい方向に変わることが多いので変化よりも「進化」と呼んでいます。どうせ書き換わるならネガティブな物語で不幸にならないように進化していきたいと思っています。最近になって脳科学の本などを読むようになってエビデンスのあることなのだと分かって何だか不思議です。 この章も実験や具体例が多いので理解が深まりました。
 

8. のどまで出かかっているのに


単語(人の名前と氏名、映画や本のタイトルなど)を思い出そうとしても思い出せない。


確かに知っているフレーズなのだが、どうしても頭に浮かんでこない場合、出てこない単語は忘れたわけではない。


脳内のどこかに保たれているが一時的に取り出せなくなってしまう。このような現象は舌先現象(TOT現象)と呼ばれている。


単語には必ず脳内でそれを表象するニューロンとそれに関連する神経回路が存在する。


ニューロンは単語の視覚的な特徴、概念的情報、感覚や感情、単語と関連する過去の経験、単語の音韻的情報などを保持している。


担当するニューロンが探している単語にたどり着くためのニューロン活性化が一部しか起きていないか弱いときに「ど忘れ」が起きる。


この現象のほとんどは自然と解消される。しばらく経つと突然頭の中にその単語が浮上するのだ。


必死に思い出そうとしている単語と音や意味が似ているといった漠然とした関連性のある単語が思い浮かぶ場合もある。こうした単語のことを心理学者は醜い姉妹と呼ぶ。


醜い姉妹に意識を集中すると、かえって状況は悪化する。脳が誤った神経回路に固執しなくなるとようやく正しいニューロン群が活性化されるチャンスが生まれる。


そのため「ど忘れ」したときには思い出そうとする努力をやめた途端に、まるで降って湧いたように、正しい単語が浮かぶことがあるがこれは正常な状態である。舌先現象が起きたからといってアルツハイマー病を患っていることにはならない。


Google検索していると、かえって物忘れが促進され記憶力がさらに悪化しかねないのではないかと心配する人は多い。しかしこの思い込みは誤りだ。


ど忘れした単語を自力で思い出そうとしたところで、記憶力が強化されることもなければ、特に褒められることもない。


舌先現象は記憶の想起における正常な誤作動であり人間の脳の構造上、致し方ない副産物だ。


💬 舌先現象は年齢を重ねるごとに増えてきている自覚はあります。他のことをしているときに急に思い出すことも多々あります。Googleに助けてもらうことは記憶力の悪化にはならないと分かって何だか安心しました。


9. やることリスト


後でやらなければならないことに関する記憶を展望記憶という。


展望記憶は、脳内のやることリストであり、未来の時と場所で思い出さなければならない記憶だ。


そしてこれは忘れやすい記憶でもある。


展望記憶を忘れずに覚えておくためには、あとで遂行する必要のある行動や意図を記憶しなければならない。この段階で問題が生じることはめったにない。


問題はこの後の第2段階である。「この予定を覚えておく」ということを覚えておかなければならない。


展望記憶の想起はきっかけとなる外的な手がかりが頼りだ。


やることリストを作ろう。


リストを作るのは恥でも何でもない。


カレンダーに予定を入れよう。


絶対に見逃さない場所に手がかりをおこう。




10. 記憶の敵は時間


記憶の最大の敵は時間だ。記憶を思い返さず大脳皮質の棚に置きっぱなしにしていると記憶は時の経過とともに劣化していく。


ヘルマン・エビングハウスが1885年に発表した研究結果によると最初のうち忘却は非常に迅速に進む。使用されず反復されず重要でもない記憶はその大半があっという間に消える。


だが忘却の度合いはそこからは横ばいとなる。後に残るわずかばかりの記憶はどうやら永久に保持されるらしい。


その一方で近年の研究では記憶を表彰するシナプス結合が長い間活性化されないと結合が物理的に取り除かれることも判明している。


私たちはみな、こうした現象をどちらも経験している。


一部であれ全部であれ記憶が最終的に消えてしまうかどうかは脳内に収納された情報をどうするかによって変わってくる。


記憶に及ぼす時間の影響に抗うには主に2つの方法がある


①反復すること

脳内に貯蔵できた情報を保持したいなら絶えず活性化を行うことだ。過剰学習の段階まで達成すれば、時間経過で失われる記憶の量を大幅に減らすことができる。


②意味を付加すること

人間の脳は意味が大好きだ。覚えておきたいことに物語性をまとわせ、関心がある既知の対象との連想を作り出せば、あるいは自分の人生の物語における特別な瞬間にはめ込めば、記憶を忘却しないよう耐性をつけられる。



11. 忘れられる幸せ


昨日起きたことの詳細を今日覚えておけるのは良い面ばかりとも限らない。


ときには忘れたい場合もある。


忘却は人間の機能を毎日、ありとあらゆる形で助けている。


つらい記憶は私たちの心をかき乱し、失敗を引き起こし、憂鬱な気分に陥らせる恐れがあるが、そうした記憶を排除できるというのはありがたい仕組みだ。


経験したことを忘れるのはシナプス結合が自然と退化するか、あるいはその記憶を定期的に想起しないことで生じる。


意図的に忘却する方法の1つは、そもそも記銘の段階で注意を払わないというものだ。

目をそらす

聞かない

意識をよそへ向ける


すでに注意を払ってしまい、情報が脳内に入り込んだあとの場合も選択的に忘却することが可能だ。私たちは自分に関するネガティブな情報の固定化を制限する傾向がある。


すでに固定化がなされ、長期記憶として保持されかけている記憶を忘れたいときは想起のきっかけとなる手がかりや文脈に接するのを避けるのがよい。

あの場所へは行かない

あの記憶のことは考えず話題にしない

うっかり反復練習しないようにする

他のことを考える


不快な記憶の神経回路を活性化してはいけない。記憶を完全に想起するたびにその記憶は強化されてしまうからだ。放置されればされるほど記憶は弱まり薄れていく。


💬 ネガティブ感情を手放すためのノウハウが巷に溢れていることを考えてみても、忘れたいのに忘れられないという状況に悩んでいる人は多いのでしょう。ここまで読んできて思うことは、反芻思考は怖いということです。
 

12. 正常な老化現象


年齢に関わらず、忘れることは記憶の正常な機能の一部である。


「ど忘れ」の十中八九は中年男女の正常な物忘れである。単に年をとって忘れっぽくなっただけだ。病気の兆候ではない。


加齢による退化はマッスルメモリーでは起きない。50歳になっても自転車の乗り方は忘れないし、食事の仕方、電話の使い方、メールの打ち方、本の読み方は覚えていられる。


だが、やり方はわかっていても遂行する能力は以前のようにはいかなくなるかもしれない。


一般的に言って、高齢者は意味記憶の貯蔵量が若年の成人よりも多い。加齢とともに知識は増えるが、要求に応じて情報を引き出すのがより困難になるのである。


エピソード記憶を再生する能力も通常は加齢とともに低下する。


脳の処理速度は通常30代で衰え始める。注意力を維持する能力も加齢とともに低下する。一度に二つ以上のことに注意を向けるのも困難になる。注意力が減退すれば、記憶力も損なわれることになる。


だからといって打つ手がまったくないわけではない。

注意を払う

注意を散漫にするものを減らす

リハーサル(反復練習)をする

自己テストを行う

意味づけをする

視覚的、空間的イメージを用いる

日記をつける


といった方法を活用すれば何歳であっても記憶力を伸ばすことができる。



💬 脳トレで脳の機能が整うということは根拠がないそうです。最近はスマホの通知音など注意散漫になる要素が増えてきていますので脳トレよりも環境整備ということでしょうか。50歳くらいから私も「ど忘れ」が増えたと感じています。周囲の知人や家族も同じような状態なので今までも「年齢のせい」と考えてきましたが、理論的なことがわかると安心します。そしてそれなりに対応策も出てくると思います。読書が趣味で読書メモを書いたりしていることが何かしら良い結果に結びついていくのなら嬉しいです。
 
 

13. アルツハイマー病


アルツハイマー病が原因の記憶障害は、脳の処理速度が遅くなったり、注意力が衰えたせいで起きるわけではない。

アルツハイマー病の初期段階では、記憶の固定化と想起に関わるニューロンのシナプスが分子レベルで破壊され、神経回路の構築に必要な結合を阻害することで認知症が起きる。

病気が後期まで進行すると、ニューロン自体の死滅によって記憶障害が生じる。

アルツハイマー病の分子レベルでの原因は、アミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積してシナプスにプラークという沈殿物を形成し始めることで、病気が発症すると考えられている。

最初期の段階では自覚症状は何もない。

アミロイドプラークの蓄積が転換点に到達するまでには15年から20年の歳月がかかると考えられている。

蓄積量が転換点に達すると、分子レベルでのカスケード(反応の連鎖)が引き起こされ、病的な記憶障害などが発生する。

転換点に達していないときの「うっかり」は以下のような形で現れる。
あれ、なんでこの部屋に来たんだっけ?
あの人の名前が思い出せない
鍵、どこやった?
   ↓ 
  ※注意を払えば覚えておける 

転換点に到達した後は、
数分前に起きたことを忘れる
自分がついさっき言ったことを覚えていない
昨日あったことを忘れる
   ↓ 
※このようなことが日常的に起きる。いくら注意を払っても覚えておける保証はない。

アルツハイマー病は海馬で始まる。すでに形成された古い記憶は未だに保持されている一方で、新たな情報が失われているのだ。

舌先現象の頻度は加齢とともに増していくが、アルツハイマー病患者は頭の中に何の手がかりも浮かんでこない。

さらに悲しいことにアルツハイマー病は、海馬だけにとどまってはくれない。

空間情報処理をつかさどる頭頂葉にまで病変が及ぶと、患者は慣れ親しんだ場所でも道に迷うようになる。前頭葉および前頭前野の神経回路が病魔に侵されると、論理的思考、意思決定、計画立案、問題解決といった機能が低下する。

💬 具体例として鍵が見当たらないときのことが書かれています。サイドテーブルの上やコートのポケットで見つかるならその物忘れは正常。もし冷蔵庫から鍵が見つかれば少々心配な話となるそうです。電子レンジの扉を開けたら中に玄関の鍵が入っていた、という話を知人から聞いたことがあります。著者が例に出すくらいですからこういうことって結構あるのでしょう。舌先現象のことも、アルツハイマー病患者は頭には何の手がかりも浮かんでこないという一文が印象的でした。「忘れた」という意識があるうちは忘れたことにならないという話を聞いたことがありますが、手掛かりが何も浮かんでこないという表現のほうがわかりやすいと思いました。

 

 

  第3部 記憶力を伸ばすもの、妨げるもの  

第3部はこれまでの内容と重複も多いため、重要な部分だけまとめていきます。


14. 文脈で覚える

人間の記憶力は文脈に依存する場合が多い。記憶再生時の文脈が記憶形成時の文脈と一致すると非常に早く、より完全な形で記憶を想起できる場合が多い。


15. ストレスの影響

ストレスのかかる出来事が一つだけの場合は、ストレスのかかる状況の中心となる情報の記憶は強化される。一方で周辺的な細かい情報の記憶はかえって曖昧になる。

さらに懸念すべきことは常にストレスを抱えていると海馬のニューロンが徐々に失われていく事態に陥る。

日常生活からストレスを取り除くことは難しいかもしれないが、ヨガ、瞑想、健康的な食事、運動、マインドフルネスの実践、感謝の念、思いやりの心などによって過剰なストレス反応を起こさないよう自らを訓練することができる。


16. 睡眠をとろう

記憶に関して、睡眠は2つの重要な役割を果たしている。

①新たな記憶の記銘に必要な注意を払うためには、十分な睡眠によって前頭葉のニューロンに油断なく活発で、働く気満々の状態になってもらわなければならない。

また、起きている間に生じた固有の神経活動パターンが睡眠中に再活性化される。この再活性化によってニューロンの結合が助けられ、情報を一つの記憶にまとめる固定化が促進されると考えられている。

②アルツハイマー病が発症する原因と考えられているアミロイドプラークは、深い眠りに入ると脳の清掃員であるグリア細胞によって除去され代謝される。

成人は一晩に7時間ないし9時間の睡眠を必要とする。それより少ない睡眠は心血管系、免疫系、メンタルヘルス、記憶などの機能を損なう。

💬 脳科学、神経科学の本を読むと必ず睡眠の重要性が出てきます。7時間というのも概ね一致しているようです。高齢者は眠れない悩みを抱えている人が多いようですし、この7時間睡眠は結構難しい問題なのかもしれません。私は娘が高校生の時は朝4時半に起きていました。娘の高校は朝講習という特別授業をやっていたのでいつもかなり早い時間に登校していました。私も仕事をしていたので自分の出勤準備もあり4時半に起きてもギリギリでした。3年間の早起きが習慣になり、今は夫と二人暮らしなのですが4時~5時ころに目が覚めることが多いです。7時間睡眠が重要と知ってからは夜は10時ころには寝るようにしていますが、自分の時間を早朝に持っていくことで特に問題はありません。躊躇わずに10時に寝ることができるのも読書で得た知識のおかげです。

 

17. アルツハイマー病を予防するには

アルツハイマー病の98%は遺伝と生活習慣が組み合わさって起きる。しかし純粋に遺伝だけが原因の家族性アルツハイマー病を発症するのは患者の2%にすぎない。

アルツハイマー病はある日突然発病する疾患ではない。

まずは食事と飲み物から見直してみよう。大雑把に言って心臓に良いものは脳にも良く、アルツハイマー病の予防にも効果的である。

運動し、知的な刺激を受けよう。

新しく何かを学ぼう。人は常にシナプスを得たり、失ったりしている。新しいことを学ぶたびに新たな神経回路、新たなシナプスを作り出し強化しているのである。

教養があり、刺激的な社会活動や知的活動に定期的に従事している人は、認知予備能が高い。

あり余る豊富な神経回路があると、一部のシナプスが損なわれてもまだダメージを受けていない神経回路を動員することが可能なのである。


18. 記憶のパラドックス

記憶を重要視しつつも、大げさに考えすぎないほうがいいのではないだろうか。

驚異の記憶力があったところで、幸福や成功が約束されるわけではないのだ。

人間の脳は意外性に乏しい記憶を保持するようにはできていないが、私たちの生活のほとんどは意外性に乏しいことをこなすのに費やすされる。

記憶力に対しては大事なこと以外は全て忘れてもかまわないと考える方が理にかなっているだろう。

つまり重要なのは人生で起きた意義深い出来事の詳細を覚えておく能力なのだ。

こうした記憶は自己意識をもたらし、自分の人生の物語を成り立たせ、自己の成長や他者との結びつきを生み出す可能性を秘めている。

ただそうした意味深い記憶が忘れ去られても、人間であることの意味を決めるのは記憶ではない。

人を愛し、愛されていると感じるのに、記憶は要らないのだ。

記憶を重要視しよう。同時に、大げさに考えすぎないようにしよう。

💬 最後は癒される内容でした。私たちは人生で起きる大半は覚えていない。でも意義深いことは覚えている・・・高齢になってから過去の苦しみや恨みつらみばかりが思い出されるのであれば悲しいことです。意義深いことが楽しいことばかりではないでしょうが、どのように自分が歳を重ねていくのか、ある程度の年齢になったら考えなければいけないということでしょう。



  まとめ、記憶のためにできること

・注意を払おう  
視覚化しよう
意味を付加しよう
想像力を働かせよう
1にも2にも3にもロケーション
個人的なものにしよう
ドラマを追い求めよう
違うことをしよう
練習が完璧を作る
想起のための強力な手がかりを十分に用意しよう
ポジティブでいよう
記憶を外在化しよう
文脈が肝心だ
リラックスしよう
睡眠をたっぷりとろう


全体を通して読みやすくわかりやすい内容でした。表や図解よりも平易な文章と身近な具体例で表現されていることでイメージしやすかったです。こういう本を読むことこそ脳トレなのではないでしょうか。