追熟読書会: グラッサー博士の選択理論(8)幸せな結婚生活

グラッサー博士の選択理論(8)幸せな結婚生活


ウイリアム・グラッサー著

選択理論の基本の書(実践編







第二部      実践編

第8      幸せな結婚生活


この章では再び結婚生活について、さらに詳しく書かれている。


『愛とは』

  • 私たちは、しばしば予期せぬ恋に落ちる。自分が親しくなれそうな人を見つけ、わくわくする。自分をありのまま受け入れてくれるだけでなく、将来の自分を受け入れてくれる人、上質世界を分かち合える人、自分を裁いたり変えようとしたりしない人と一緒にいることは気分がいい。
  • 愛を定義するなら、希望と恐れを分かち合う。しかも喜んで分かち合う気持ちのことだ。分かち合うことができる限り、あなたが愛にそのままとどまっている可能性は高い。「最初に分かち合いを自由にできなかったら、たとえあなたがどれほど愛の中にいると感じても、あなたの愛は弱い」弱い愛は、長続きはしない。もし恋に落ちた2人が、選択理論を知っていて上質世界を知っていれば、この知識を使って愛にとどまることができる。

『リアリティ』
  •  他人について空想を思いめぐらさないということは不可能だが、それらを分かち合うことは相手に多くを求めすぎているのかもしれない。しかし、現実のものを分かち合うことができないことがわかれば愛は終わり始めている。
  • 2人がお互いを知れば知るほど違いがある。愛にとどまるためにはその違いを解決しなければならない。選択理論を知らない人たちは、外的コントロール心理学に逆戻りして相手を変えようとするかもしれない。

『カウンセリング』

ここからはグラッサー博士のカウンセリングの話になる。
  • クライアントはティナ、28歳。あらゆる分野で有能な女性である。彼女は演劇を教える高校教師で学校のリハーサルがない夜の時間に地域の演劇を指導している。恋人のケビンは30歳で、近くの中学校の前途有望な副校長でフィットネスに関心がある。2人は2年間交際していて、とても相性がいい。しかしティナは結婚願望が強く、彼は決断を渋っていた。
  • カウンセリングを行ったグラッサー博士は、ティナがコントロールできるものに焦点を合わせることにした。リアリティは人によって違う。ティナは、彼女の現実で生きるしかない。ケビンの現実について、ティナはコントロールできない。ティナの現実は、彼の気持ちがわからないでいるということ。お互いが気持ち理解し合っていると言えるようになるまでは、彼との結婚について考えるべきではない。 将来の話をしないこと、将来があるなんて匂わせないこと。それよりも、出会いの頃よりももっと良い関係になるように焦点を当てることだ。彼がしたいと思わないことをさせようとすることに何の意味もない。
  •  ティナは、落ち込むことも選択できる。怒り、喚き散らす、食ってかかる、脅す、他の男性と会う、彼を捨てる、病気になるなど人生をめちゃくちゃにすることができる。しかしティナは上質世界のことを知っている。自分の知っているものを使う良いチャンスだ。
  • 良い関係が続いても彼がこのまま決断をしないようだったら、関係を終わりにする準備をしなければならない。彼はティナの人生をコントロールする権利はないし、同様にティナにも彼の人生をコントロールする権利はない。いつまでこの関係を続けるか期限をつけた方が良い。それを決めるのはティナ自身だ。
  • ティナは、結婚をせがむようなメッセージを送らないことにした。2人は次の3ヶ月とても良い交際をした。彼は、彼がしたくないことを無理にさせようと思わないというティナの姿勢に興味を持った。ティナは、自分が外的コントロールをしなくなってからどれほど幸せになったかを話した。

『解決のサークルと創造性』
  • 2人がしたことは、解決のサークルを使うことだった。2人には意見の相違を処理する道具がある。これは意見の不一致がないという意味ではない。意見の相違を処理する道具があるということである。選択理論と解決のサークルを使って、2人は何でも自由に話し合う。
  • 読者の多くは、あまりにも理想が描かれていると思うかもしれない。しかし良い結婚に問題が起こるとすれば、どちらかが退屈になって外的コントロール心理学を尊重することで起こる。私たちは創造性を決して忘れてはならない。新しいことは批判されるだろうと思うから私たちは創造的であることを恐れる。選択理論に移行したカップルは、そんな恐れは抱かない。マンネリになったりすると、いつでも創造システムを使おうとする。
  • 解決のサークルは、創造的であるための安全な場を提供してくれる。選択理論には悪い面はない、あらゆる人間関係の問題でそうであるように、誰かが先に動いて外的コントロールを止めなければならない。
  • 選択理論の適用も、相手を変えるつもりで選択理論に基づく考え方をさせようとする罠にはまることがある。これは最善の意図があっても、基本的には外的コントロールである。コントロールはコントロールを生む。

『構成的結婚カウンセリング

失敗しつつある結婚において、ほとんどの場合、当事者は失敗者ではない。個人的には有能な人たちである。選択理論をベースにした構成的結婚カウンセリングをうけていれば、多くの結婚が救われる。カウンセラーは具体的な質問を投げかけ、2人が順番に応答するよう要求する。問いかけは次のようなものである。

①あなたは本当に助けが必要でここにいるのですか。それとも既に離婚の決意を固めていて、自分は助けを得ようとしたと言いたいからですか

  • 助けを求めるという決断が両者になければカウンセリングに望みはない。個々に自分のために助けを求めているなら結婚カウンセリングではない。

②一言で言うなら、この結婚の何が問題だと思っていますか。

  • 彼らは互いに自分が正しいと思い、自分を支持してくれるカウンセラーを探している。言いたい放題にしておくとカウンセリングの努力が無駄になる。

③あなたは誰の行動をコントロールできますか。

  • これは難しい質問ではない。②で相手の問題点を勢いよく言ったあとで自分の行動しかコントロールできないことを知る。

④あなたの結婚で、一つだけ良いことを話してください。

  • ほとんどのカップルは、まだ結婚に関して良い点を挙げることができる。でなければカウンセリングを受けにくることはない。良いことを少しでも話すとき、怒りや相手を責める気持ちが消えていく。

⑤よく考えてから私に話してください。今週、結婚を良くすると思うことを何かするとしたら、それは何ですか。それが何であれ、あなたが自分でできること、相手がするしないにかかわらず、自分1人でできることです。

  • ④を少し拡大しただけの質問。2人が何か新しいことを考え、その上に積み上げる機会となる。これは彼らに少し希望を与える。

⑥今週中にここで考えたものの他に追加して何かを考えるつもりがありますか。前の質問にあったように、自分のすることだけをコントロールできるという、同じ原則に従って、それを行動に移してください。

  • 彼らが楽しめる別の肯定的なものに焦点をあわせる機会を与える。
このあとはエドとカレンの40代夫婦を例に構成的結婚カウンセリングの説明が続く。


 ◆第8章を再読して感じたこと

  • 以前はこの章はあまり真剣に読んでいなかった。今回、繰り返し読んでみた結果わかったことは、リアリティの意味を今までよく理解していなかったということである。それは理想論だ、という言葉を聞くことは多いがこれは机上の空論という意味であって上質世界の概念は存在しない。上質世界は上質世界として尊重し、それでもリアリティ(現実)を分かち合うと考えると解決のサークルも理解しやすくなった。どちらかが我慢して表面的に穏やかでいることではない。しかし批判的にならずに話し合うことの難しさはやはり感じる。これは夫婦に限らず職場での話し合いでも最も難しいように思う。
  • もう1つ印象深かったのは、ティナのカウンセリングで、が決断をしないようだったら彼との関係を終わりにする準備をしていかなければならないという点である。期限を設ける。これも恋愛に限らず転職などでも同じだと思う。上質世界からイメージ写真を剥がすのはなかなかに難しいと度々本書にも書かれているが、イメージ写真を剥がす良い方法があるのだろうか。一人でできる他のことに集中するというのは1つの方法だろう。理論や知識で価値観を変えていく方法もある。しかし、実は私は意外と簡単に剥がれてしまうような気がしている。剥がすのではなくいつの間にか剥がれているという印象を私は持っているが、グラッサー博士が語る人物はいつも強烈なイメージ写真を持っている。上質世界についての理解が深まっていくと、また新たな疑問も出てくる。

次章の「信頼される生き方」では親と上質世界について書かれている。今までよりも少し長いので時間をかけて読んでいきたいと思っている。


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