2023/07/16

グラッサー博士の選択理論(7)創造性


 ウイリアム・グラッサー著

選択理論の基本の書である。

各章のまとめの7回目。





第一部      理論編

第7      創造システムの二面性

創造性とは、求めているものが現実に得られないときに、新たなアイデアを生み出すため、脳が情報を再整理することである。この能力はどんな人にも備わっている。

  • 私たちの行動に創造性を付与するのが創造システムだが、プラスの面だけではない。私たちが求めている人間関係が得られないときに、しばしば自己破壊的な創造をする。このことにより大きな害をもたらす可能性もある。
  • このシステムは止むことなく活動し、あきらめることもない。多くの場合、創造システムは新しい行為と思考を提供する。これが事態を悪くすると思えば拒否できる。拒否するのが困難な場合もあるが「これも一つの選択である」と理解できれば、自分の行為と思考を自らコントロールできる。
  • 本章では創造性の闇の部分ついての解説がメインになっている。私たちが良い選択をするようになる前に、悪い選択をした理由を知らなくてはならないからである。グラッサー博士の精神科医としての臨床の数々、心身症や精神疾患のこと、免疫システムと創造システムの関係性が語られている。病気になったときは人間関係を再点検することも必要である。また、この世が終わるわけではないという気持ちになったときに自分の人生のコントロールを取り戻した話など非常に興味深い内容がつづく。
  • 落ち込みもまた創造システムにより提供された感情である。第4章でも説明しているが、落ち込みの理由は3つある。
第1は怒りの抑制。 
第2は助けを求める叫び。 
第3は逃避である。

  •  落ち込むことはコントロールを与えてくれるが支払う代価も大きい。しかし結果は何であれ、創造システムの目的は問題を解決に導く新しい行動を見つけることである。
  • 自分の人生のコントロールを取り戻せない人、不満足な人間関係を諦めきれない人は、関節炎などの身体症状を抱える。このことで落ち込みを選択しないで済むことがある。それは彼らに取り組むべき何かを与えたからである。 
  • この章の後半は再びフランチェスカとロバートの話に入っていく。ちなみにこの二人の関係は「マディソン郡の橋」という小説をモチーフにしている。小説ではフランチェスカはカウンセリングは受けていない。ロバートと夫とどちらを選んでも苦しみとみじめな感情を味わう。解決法のない葛藤を抱えてフランチェスカは落ち込みを選択することで怒りを抑え、良い母でいることができた。
  • フランチェスカは日記をつけることで人生を受け入れた。いつの日か自分の死後にでも子どもたちがこの日記を読んで自分の気持ちを理解してくれるだろう。またフランチェスカが人生のコントロールを取り戻す助けになったのは隣人の存在だった。本書に登場するカウンセリングは選択理論を適用したグラッサー博士なりの解釈である。小説で何が起こり、何が起きていなかったかは重要ではない。しかしこの小説は破壊的な創造システムがどのように私たちの行動にかかわっているか知るための助けになる。
  • フランチェスカは精神異常になるような女性ではない。彼女は良い人間関係を持つことも、自分や家族の世話をすることもできたからである。フランチェスカは落ち込む以外に問題解決のために大したことをしなかった。しかし少なくとも彼女は問題に直面した。
  • フランチェスカは神経症や恐怖行動、不安障害、PTSD、パニック行動や妄想行動などを選択することもできた。様々な選択肢について解説が語られているがこのまとめでは割愛する。どちらにしても年月が過ぎロバートの記憶が薄れることで症状は消えていくが、何かのきっかけで思い出が甦り発作を起こすかもしれない。考えないようにしていることを考えるという逆説手法のカウンセリングもある。しかしこれは一人では試さないほうがいい。グラッサー博士の仮想カウンセリングでは仕事に就くことで所属の欲求を満たす方向性を提案している。
  • 選択理論はより良い選択をするためのものである。自分の人生をコントロールする方法を見つけたたときに症状や信条を進んであきらめるようになるのである。本当の思いやりとは人々が自分自身を助けるのを援助することである。

◆◆追記◆◆◆
グラッサー博士の、別の書籍「テイクチャージ 選択理論で人生の舵を取る」の中で、創造性について次のような説明をしている。
  • 私たちは、現時点のイメージ写真を充足させるため、行動システムから可能な限り最善の行動を選ぼうとしている。
  • 行動システムは2つの部分からなる。1つは整理された使い慣れた行動。もう1つは再整理の状態にある。この再整理が新しい流れになるが、今持っているものより効果的でないかもしれない。そのためよく整理された使い慣れたシステムから落ち込みなどの行動を引き出してきて対処するのである。

◆第7章を再読して感じたこと
  • グラッサー博士が繰り返し述べていることは、博士の言うことが仮に役に立たなかったとしても、何の害にもならないということである。日々私たちにできることがあるのならば試してみること、仮にこう考えてみようと選択理論のエキスを取り入れてみても害はないということである。
  • 何度読んでもこの創造性については難しい。理論として納得したとしても自分のものになったという実感があまりない。こういうシステム的なことは実感するというものではないのかもしれない。意識しなくても常に陰で動いているシステムと解釈するべきなのだろうか。しかしこの理論を知ることで選択ができるようになるとグラッサー博士は言っている。もう少し勉強と体験が必要ということなのだろうと考えながら読了した。
  • 本書で引用されている「マディソン郡の橋」は大変有名な小説で映画化もされているが、私は読んでいないし映画も見ていない。この小説をグラッサー博士のカウンセリングを念頭に置きながら読んでみるのも勉強になるのかもしれないと思っている。
これで理論編は終了。第二部は実践編で幸せな結婚生活、信頼される生き方、学校や職場での選択理論。第三部は応用編で地域社会への応用である。






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