ウイリアム・グラッサー著
選択理論の基本の書である。
各章のまとめの6回目。
第一部 理論編
第6章 葛藤の解決の仕方
『待つ』
- グラッサー博士の恩師、ハリントン博士は次のように言っている。「何をしてよいかわからないときには、可能であるなら、どちらの方向にも進まないで何もしないことだ」そうすれば少なくとも事態を悪化させないですむ。最終的には時間がその葛藤をある方向に動かし決断に伴う苦痛が少なくなる。
『カウンセリング』
- もう一つの解決策は、良いカウンセリングを受けることである。そうすれば選択肢を整理することができる。その中で平等な選択肢と思われていたものが、実際には平等でないことに気づくかもしれない。カウンセラーと話している間に時間は経過していく。話すことでしばらくの間そのままでいられる。
- 効果的な方法は第3の選択肢の方向へ導くことである。この選択肢は葛藤がなく、満たされない欲求と同じ欲求を満たすものである。クライエントが葛藤の渦中にいる限り何を選択しても葛藤の解決とはならない。
- リアリティセラピーの特徴
- 問題について長い時間をかける必要がない。問題は常に不満足な現在の人間関係である。
- 問題は常に現在であるのでクライエントの過去に遡って長い集中的な調査をする必要がない。
- 私たちが唯一コントロールできるのは自分だけであることを教える。
『カウンセリング例』
ここからは、リアリティセラピーを使って、深刻な葛藤の渦中でもがいている45歳の女性フランチェスカのカウンセリングが書かれている。
- いちばん良い方法は、まずどこからでも話していただくことです。裁かれるのじゃないかと心配しなくていいですよ。という言葉で博士はカウンセリングを始めた。
- フランチェスカは既婚で10代の2人の子どもがいる。イタリア国籍だが、第二次大戦直後に軍関係でイタリアに来ていたリチャードと結婚して移住してきた。今は農場に住んでいる。夫はいい人でそれほど親密ではないがケンカするわけでもない。
- 6週間前、フランチェスカはロバートという男性に出会った。ロバートは写真家でカメラをかかえて旅をしていた。フランチェスカはロバートを好きになり4日間一緒に過ごしたが、ロバートは帰っていった。子どもがいるし夫を捨てて一緒に行くことはできなかった。
- この問題にすぐにできることは何もない。時間だけが解決してくれる。しかし何か欲求充足になることを彼女が選択する手助けはできる。
- 彼女がコントロールできる何か。彼女だけが一人でできる何か。そして誰も取り去ることができない何かを見つけなければならない。葛藤に焦点を当ててはならない。何かできるものに焦点を合わせることで、彼女に時間を与え希望を与えてくれる。物事は変化する。時間とともに葛藤は忘れ去られる。
- 博士は「私に会いにくる選択をした理由は何でしたか」と質問をする。肯定的な意味で選択という言葉を導入したのである。フランチェスカは答えた「私が来たのは、誰かに話さずにはいられなかったからです」
- カウンセリングでできることは、古い生き方が上手くいっていないと彼女が話すときに、新しい生き方を探す手伝いをすることである。しかし、落ち込みは人を頑固にする。違う人生について考えるより落ち込み続けるほうが容易なのだ。
- 私たちはフランチェスカがどうしたら自分自身を助けることができるか考えようとしている。農場の仕事は単調で孤独だ。夫にそのことを話しても理解できないだろうとフランチェスカは言う。
- 博士の次の質問はイタリアに帰りたいか、というものだった。慰めが必要なときのために家族は存在しているのだ。その質問はフランチェスカを喜ばせたが、お金に余裕がないので帰れないのが現状だった。
- フランチェスカを救ったのはイタリアに帰るお金を自分で稼ぐことでコントロールを取り戻すことだった。彼女は以前は教師をしていた。彼女が望むならば教職に戻ることができる。
- カウンセリングのポイントは現在の問題に厳密に沿っていくことである。失われた生活や子ども時代のことに触れても意味がない。過去に焦点をあてることは、みじめな経験を繰り返すだけである。
この章のほとんどがフランチェスカとの会話に割かれている。葛藤とは何かを学ぶとともに、カウンセリングで博士が実際にどのタイミングでどういう言葉を使っているか、非常に興味深い内容である。
◆◆◆追記◆◆◆
グラッサー博士は、別の書籍「テイクチャージ 選択理論で人生の舵を取る」の中で、葛藤は2種類に分けられると書いている。
1つは「真の葛藤」
解決策がないにもかかわらず何かをしなければならないという感じを持ち続ける。こんなときは、できるだけ効果的に何もしないでいることが最善策。しかし何もしないということは苦しく実践が難しいが選択理論的理解をすれば何もしない状態でいられるようになる。
もう1つは「見せかけの葛藤」
努力で解決策を見出すことができるとわかっているが、行動できない状態。行動できないのは何もしないほうが楽だからである。
◆第6章を再読して感じたこと
何もしないでいることは、私は割とできるほうだと思っている。それでも何にでも手出し口出ししたくなるときは気持ちが落ち着かないときである。上手に待つこともなかなかに難しい。それでも心をこめて「何もしない」でいようと努力すると、行動するように周囲がアドバイスしてきたりする。特に既婚女性にとっては親のこと、子どものこと、親戚のこと、どうにもならないことを抱え込んでしまうことがある。上手に気分転換することでさえも主婦の立場では難しいことがある。グラッサー博士はかなり具体的に第3の選択肢のことなどを解説してくれている。
初めてこの葛藤の考え方を読んだときは癒された感じがした。選択理論への入り口は外的コントールと葛藤の考え方に興味を持ったことだった。とにかく周囲の○○せよという圧力は絶えることがない。道徳観、義務感、罪悪感、責任感、自分のしたいことと板挟みになったときにどうするか。グラッサー博士は明確に説明し道を示してくれている。カウンセラーの立場で読むか、クライアントの立場で読むかで面白さは変わってくるのかもしれない。それでも葛藤に焦点を当てずに自分にできることに注力するのは、立場や場面に関係なく活用できる技だと思う。上質世界の概念を理解することでさらに実践しやすい内容になることも選択理論の魅力である。
次は第7章「創造システムの二面性」いよいよ理論編の最後の章になる。前回は創造について深く考えるほど理論を理解できていなかった。今回はじっくり読んでまとめてみたいと思う。

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