2023/07/06

グラッサー博士の選択理論(5)解決のサークル

  

ウイリアム・グラッサー著

選択理論の基本の書である。

各章のまとめの5回目。





第一部      理論編

5      人との関わり方 

 

他人との関わり方は性格の違いを理解することから始まる。この章は主に結婚についての考察であるが、まず冒頭にグラッサー博士のご両親の性格の違いが書かれている。母親は力の欲求が強く支配的で関わるすべての人をコントロールしたがった。父親は優しい性格で他人をコントロールしようとしたことがなかった。ご両親は性格が極端に違っていた。

 

『性格の違いと欲求の強さ』 

  • 性格の違いは、5つの基本的、あるいは遺伝的欲求の強弱による。それぞれの欲求の強さは誕生時に決まっていて変化することはない。性格的に問題のない配偶者を見つけること、また性格が一致しない配偶者と上手くやっていくことは運任せにすべきではない。
  • 自分と、他の人の欲求を推測することは完全にはできないにしても、人にどう対処するか一通りの理解を与えてくれる。あまりにも異なる性格の人と結婚するべきではなく、仲良くやることが困難な人との関係で無理な努力をしない方がいい。
  • ほとんどの場合、欲求の強さはそれほど違わないので話し合って解決することは不可能ではない。お互いをコントロールしようとする気持ちを捨て、選択理論を2人の関係に適用すればこのような違いは解決できる。しかし正確な交渉のためには、どの欲求がぶつかり合っているかに気づく必要がある。

 

『解決のサークル』

  •  問題の解決のために選択理論を使う良い方法は、自分たちの結婚が大きな輪の中に入っていると考えることだ。この輪のことを解決のサークルと呼んでいる。

・床の上に、想像上の輪を描いてみる。

・それから2人は椅子を持ってこのままの中に入って座る。

・この解決のサークルの中には、妻、夫、そして結婚という3つの実態がある。

  • 2人は欲求の強さの違いに基づく主張を持っている。2人とも選択理論を知っているので、相手に強制しようとすれば弱い方が押し出されるか自分から外に出てしまうことがわかっている。
  • 意見の不一致がどれほど深刻であっても、サークルの中に入って違いについて話し合わなければならない。一方が話し、片方がそれに同意することで話し合いが始まる。
  • サークルの中でお互いが結婚を良くするためにできることを話す。このような枠組みの中で妥協点を見つけなければならない。どちらかが完全に譲歩することがたまにはあるが、現実的には、妥協点を見つけなければならない。
  • サークルの中で自分の行動しかコントロールできないことを受け入れる限り、どんなことでも話し合いで妥協点を見出すことができる。
  • 妥協するということは次のようなメッセージを送ることになる。「私が個人的に欲しているものよりも、2人の人間関係の方がもっと大切だと思っている」このメッセージは強力である。

 『欲求の強さと解決のサークル』

  • 生存の欲求の強さに違いがある場合は、

違いを結婚初期に認め合い、問題が起こったときに交渉する計画を立てていれば危機は防ぐことができる。

  •  愛と所属の欲求の強さに違いがある場合は、

サークルの中に入ってお互いに何が嫌で何を譲る気持ちがあるのかを話し合う必要がある。自分の行動しかコントロールできないということを忘れてはならない。そこでは、自分が何をする気持ちがあるかだけ話すべきで、相手に何をしてほしいかではない。私たちは与えられる以上の愛を求めるようである。受けることでなく与えることに話し合いの焦点が合っていれば、愛の問題にとって素晴らしい回復の好機となる。

  •  力の欲求は、

最も満足させるのが難しい。もし夫婦の両方とも力の欲求が強く、それを満たそうとすると結婚を損なうことになる。力の欲求はその性質からして話し合うことが困難である。なぜなら、妥協することは、力を開け放すことを意味するからである。

  •  自由の欲求の高い人は、

あらゆる長期的な親しい人間関係で困難を覚える。自由とは誰からも所有されないということだからである。お互いが相手の求める自由を受け入れることができれば上手くいく。そのために2人が解決のサークルの中に入って、どの自由を自分は譲歩するつもりであるかを相手に話す必要がある。

  • 楽しみの欲求が高い人が、

それを分かち合うことはあらゆる人間関係にとって素晴らしいことである。楽しみは、年齢、性別、あるいは金銭の不足などで制限されることはほとんどない。少し努力すれば、いつでもどこでも笑うことも学ぶこともできる。しかし2人とも楽しみの欲求が低ければ、自分が見逃しているものが何かわからないので平穏無事かもしれない。

※解決のサークルについては選択理論心理学のHP「選択理論.jp」にも説明がある。

興味のあるかたは下記のリンクから↓

解決のサークルの内側で~恋愛/夫婦関係編~

解決のサークルの内側で~子育て/親子関係編~

解決のサークルの内側で〜上司部下/マネジメント編


『欲求の強さを知る

どうすれば欲求の強さがわかるのか。

自分や相手に関する知識と、相手に対する洞察を基に自問自答しなければならない。

  • 生存の欲求が強い人は、リスクを冒さない。
  • 愛と所属の欲求が強い人は、どのくらい得るかではなく、与える気持ちがある。
  • 力の欲求が強い人は、
いつも自分のやり方を貫きたい
最終決断を下したい
人々を所有したい
自分の言動はいつも正しいと思われたい
  • 自由の欲求が強い人は、

型にはめられるのは嫌だ
一つのグループの中に長くいるのは嫌だ 

  • 楽しみの欲求が強い人は、
学ぶことが好き
教えるのが好き
  • 欲求の強弱についてすべてを語ることは難しい。時間をかけて話し合い、自分の感情を記憶することだ。欲求が満たされたときには気分がどんなに良くなるかを覚えておく。気分が良くなればなるほど、その欲求は強い。
  • 上質世界のイメージ写真が強力であれば相手を正確に見ることができなくなる。そうなる前に2人の欲求の強弱を考えるほうがいい。巷に溢れている「私の愛で相手は変わる」という妄想こそ最大の外的コントロールである。

 

◆第5章を再読して感じたこと

  • 解決のサークルが一番のポイントになる。この章でもあらためて交渉、話し合うことの大切さを感じた。察してほしい、言ってもわからない、とすべてを諦める前にできることがあるのかもしれないと感じさせてくれる内容だった。その一方で「仲良くやることが困難な人との関係で無理な努力をしない方がいい」とも言っている。相手の欲求を知ることが非常に重要になるということだろう。
  • この章では社会病質者と仕事につかない人についても書かれているが、一般的な内容ではないため今回は割愛した。仕事につかない人とは引きこもりとは違っている。社交的で薬物やアルコールに依存しない。自分を世話してくれる人には依存する独特な性格の人ということであるが、読み進むうちに、もしかしたら意外と多いのかもしれないと感じた。興味のあるかたは一読を。
  • 日本の場合はグラッサー博士のご両親とは逆に力の欲求が強いが多いのではないだろうか。私の両親は父が外的コントロールの塊のような人で、母は父の機嫌を損ねないように気を使いながら日々を過ごしている。決して過去形ではなく父が91歳になる現在でも続いているのである。しかし決して仲の悪い夫婦ではないので、これはこれで微妙なバランスを保っているのかもしれない。グラッサー博士と同じように私も母に離婚をすすめたことがあったが今年で結婚65年目になる。現実問題としてサークルに2人揃って入るという行為はかなりハードルが高いのかもしれない。


次回、第6章は葛藤について。私が選択理論に興味を持つポイントになったのは外的コントロールと葛藤だった。勉強を続けるうちにイメージ写真の概念の凄さがわかってきたが入り口は葛藤の考え方だったと記憶している。



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