2023/06/25

グラッサー博士の選択理論(3)上質世界


   ウイリアム・グラッサー著

   選択理論の基本の書である。

   各章のまとめの3回目、上質世界について。

 





第一部      理論編

3      心のアルバム


現実世界は誰にとっても同じ世界であると私たちは考えがちだが、実際には2人の人がいたら2人とも違った見方をする。私たちはたくさんの現実を自分が見たいと思うやり方で知覚しているのである。しかし私たちが見るものは他人が見るものとそうかけ離れてはいない。さもなければ一緒に生きることはできない。しかし同じでないことは確かである。
 現実とは、多数あるいは重要な人物、あるいは権力のある人が「現実である」というものと深く関係している。しかし最終的には私たちは他人の同意とは無関係に、自分に一番都合の良いように現実を定義する。
 選択理論の説明によれば、私たちが現実を他の人と違うように見る理由は別の重要な世界に関係がある。この世界は上質世界と呼ばれている。

『イメージ写真』

  • 上質世界は私たちの欲求をもっとも満足させてくれる具体的なイメージ写真によって成り立っている。特定のイメージ写真を選び取る一番の理由は気分が良くなるからである。私たちは自分の欲求を満足させようとして、絶えず上質世界を創造している。
  • 私たちのほとんどは上質世界に自分自身について二つのイメージ写真を持っている。一つは、少し理想化されたイメージ写真、もう一つは極端に理想化されたイメージ写真である。極端に理想化されたイメージ写真は空想である。達成する可能性のある少し理想化されたイメージ写真で私たちは我慢をする。
  • 私たちは自分以外の全ての人間を上質世界から締め出すことができるが、どのようなイメージ写真を描いたとしても自分自身を上質世界から締め出すことはできない。全く非現実的なイメージ写真であっても求めている限りそのような自分になろうとし続けなければならない。

三つの領域
  • イメージ写真は三つの領域に分けられる。

①私たちがともにいたいと思う人。

幸福な人は上質世界に少なくとも誰かが入っている。たいてい、愛する人であり、家族であり、少なくても1人の友人がいる。 

②私たちが最も所有したい、経験したいと思う物。

上質世界にある物のイメージ写真は必ずしも所有したい物とは限らない。美しい景色を見ることかもしれない。 

③私たちの行動の多くを支配している考え、信条。

宗教、政治理念、人生哲学、音楽、芸術、スポーツ、その他何でも私たちの生き方の一部になり得る。 

 

『上質世界の創造』

  • 上質世界は、誕生後すぐに各自が創造し始め、生涯を通して創造し続ける。赤ちゃんは泣くとミルクがもらえることを学び、この貴重な生存の知識はとても良い気分をもたらす。これが赤ちゃんの上質世界の始まりとなる。たくさん学ぶにつれ上質世界は大きく広がっていく。
  • 赤ちゃんは母親が自分を助けようとしてくれていることに感謝するが、一人でできることは自分でしなければならないことも学ぶ。自分自身を助けることを学ぶ中で上質世界に自分自身のイメージ写真をしっかり入れ始める。こうして個人の自由という最初の種がまかれる。
  • 2歳から4歳の間に、自分がしてほしいと思うことを親は十分にはしてくれないことを学ぶ。それでもまだ親は上質世界に入っている。イメージ写真を修正しながら成長する。
  • 学校に行き始めると、教師と親は力を合わせ、子どもたちがやりたいと思わないことをたくさんやらせようとする。
  • 10代になる頃には親と子の間の権力争いは増大する。相手がしたくないと思うことをお互いにさせようとする。選択理論を理解している親は10代の子どもの上質世界に入り続ける努力をする。


『上質世界と人間関係』

  • 人との関係を今よりも良くするためには、相手の上質世界に何が入っているかを学び、それを支持する必要がある。それによりその人との関係は親密になる
  • 私たちは自分の願望を満足させてくれなくなっても、しばらくは上質世界にあるイメージ写真を持ち続けることになる。イメージ写真を剥がし取ることは苦痛を伴うことであるからだ。
  • どんな理由であれ、上質世界に誰かのイメージ写真を持ち続けて、その人との生活が自分の望むようなものでなければ苦しむことになる。
  • 私たちは皆、自分の上質世界を支援してくれる人を必要としている。親、教師、上司の仕事は支援する人になることである。これは手間のかかることではない。1日に数分相手を注目するだけで素晴らしい効果が現れる。
  • 私たちのほとんどは、自分の上質世界にあるものを、親しい人にさえ話すことを躊躇する。支持してくれないのではないか。批判されるのではないかと恐れるからである。選択理論を知っていれば、上質世界を説明して相手に自分の恐れていることを話すのが最善である。そうすることで、必要な信頼が育まれていく。
  • 相手の上質世界を見つけて支持することはその人との関係を親密にするが、狂ったイメージ写真を支持することはできない。するべきでもない。真実を告げることが必要だ。
  • 私たちの社会がうまくいかないのは、私たちの上質世界にいる人々とうまく関わる能力がないからではない。関わらない状態でいることもできるし、その人を避けることもできる。しかし、関わらないことは人には効果があるかもしれないが地域社会に対しては効果がない。私たちの一番大きな問題は、相手を知ろうとする気持ちすら持てないことだ。

◆第3章を再読してみて、
  • こんなに細かい部分まで言及しているのかと驚いた。今まで何回も読んでいる文章だが「まとめ」をするつもりで読むと気づきが違ってくる。上質世界には三つの領域があるが、物や信条については、人と共有できなければ何のために大切にするのか意味がわからなくなると繰り返し説明している。誰を上質世界に入れるか、誰の上質世界に入れてもらうかが一番重要なこととなるのだろう。
  • 心のアルバム、イメージ写真は非常にわかりやすい例えだと思う。アルバムの写真は貼ったりはがしたりできるのだ。時には裏返しておくこともできる。信頼とは何か考える場合にも「上質世界に入れてもらう」と考えるとわかりやすい。選択理論を知ったばかりのころよりも自分の求めていることを自覚しやすくなってきたと思う。
  • とはいえ、相手の上質世界を見つけて支持することは難しい。ここでも傾聴と交渉の大切さを感じた。上質世界を知ろうと努力することは相手と同じ趣味や思考を持つということではない。「○○さんは○○が好きなんですね」と尊重してあげることだと理解はしているが、実際には自分にとって興味のないことは聞いていないこともある。この章の終盤にでてくる「私たちの一番大きな問題は、相手を知ろうとする気持ちすら持てないことだ」という文章がズシリと応えた。

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