喜多川 泰 著
人生の指南書ともいえる喜多川さんの作品の中でも本書はデビュー作という特別な位置づけにあると思う。
ある意味では若々しく理想的であり、ある意味では歩き続けて人生に疲れた人々への成熟したエールでもある。喜多川さんのことは何年も前から知っていたが実は最近まで未読だった。それは何故かというと、若者が読む本というバイアスがかかっていたからだ。しかし数ヶ月前に参加した心理学系セミナーで勧められて読んでみると非常に面白かったのである。
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最初の語り手はアレックス。中学、高校に通う2人の子どもがいる。住宅ローンが残っているのでリストラされそうな会社で何とか耐え忍んでいる。社長交代で新社長に疎まれ若手に仕事を奪われていく悲しみが淡々と語られていく。妻は話好きで可愛い女性だが最近は愚痴ばかり。鬱屈したアレックスは一人になるため思春期を過ごした町の公園に向かう。
アレックスが公園で出会ったサイードという少年は賢者の教えを求めて旅をしている。最後の教えを授けてくれるのはアレックスだと信じているサイード。物語の語り手はこの少年に移っていく。
賢者は9人、教えも9つある。ネタバレになりすぎない程度で2つの教えについて感じたことを書いていくが、詳細はぜひ本書を実際に手にとって読んでいただきたい。
なかなかややこしい話だが、江戸時代の武道を例に説明しているので若者にも理解しやすいのではないかと感じた。身分制度のなかでは職業を選ぶことはできない。武道とは武士としてどう生きるかを追求する道なのである。すべての武士が立派な人物だったわけではないと考えると成功は人についてくるものであり職業ではないという理論がスッと入ってきた。
2つ目は第8の賢者の教え。言葉には2種類ある。1つは口から発せられる音としての言葉。もう1つは心の中の言葉である。圧倒的に強く影響を受けるのは自分自身の言葉。人生は言葉によって作られている。
実際この類の本は多く出版されている。内容が似通っているのも事実だと思う。読んでも実行しなければ意味がないという人は多い。さらに言うと、そんなことはわかっているができないから困っているという人々も多い。
なぜ簡単なこと、ありきたりな内容などと言いながら実行できないのか。それは自分の心の中のひとり言に関わっているのかもしれない。ここまで考えてみて本書を読むことの意味が見えてきたように感じた。
とにかくやってみよう。
ちいさな「ありがとう」から。そして本をたくさん読んで語彙数や思考回路を増やしていこうと思う。
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