追熟読書会: ヨーナ・リンナ刑事シリーズ

ヨーナ・リンナ刑事シリーズ

      


スウェーデンで爆発的に売れて映画化もされているシリーズです。

主人公ヨーナ・リンナはストックホルムの国家警察の刑事です。警察小説ではありますがクライム・ノベル(犯罪小説)の傾向が強い作風と言われています。謎解き要素や警官の正義感、倫理感にこだわらずにエンタメとして楽しむものだと私は受けとめています。とにかくかなり変わった作品が多いです。

理由はわかりませんが、このシリーズは1~3巻がハヤカワ文庫から、4巻以降は扶桑社から出ています。

4巻の「砂男」では主人公ヨーナ・リンナと因縁の対決を繰り広げるシリアルキラーが初登場します。このシリアルキラーが独特の世界観を持っていてシリーズのシンボルのようになっています。そのため、それ以前の作品とは別シリーズのような印象を持つ人が多いのかもしれません。

このブログでは4巻以降の作品について書いていきます。(私は1~3巻は未読です)



シリアルキラーとは冷却期間を置いて次の犯行におよぶ連続殺人犯のことです。殺人を繰り返すことで何らかの心理的欲求を満たすものと考えられています。

ユレックは初登場の時点では司法精神医学局の閉鎖病棟に収容されています。そんな環境の中でも強烈な個性で人々を惑わし、外の世界を支配するような不思議な力を持っています。とにかく不気味な存在なのです。

ユレックを逮捕したヨーナと同僚のサムエルは不気味なユレックの予言を聞きました。そしてサムエルはその予言通りに家族を失い自殺をしてしまいます。

ヨーナは共犯者の存在を疑い、自分の家族にも危害が加えられるのではないかと恐れ、ついには娘を連れて行方をくらましてしまいます。

もう1人の重要人物が公安警察の警部サーガです。ヨーナもサーガも日本の常識では考えられない行動を繰り返します。ヨーナの傍若無人ぶりは処分の対象になることもあります。 サーガに関しては公安は何をしても許されるという雰囲気があります。私たち日本人にはピンとこないと思います。この辺は完全にエンタメとして読むしかないでしょう。

とにかく変わった作品が多いシリーズですが、最初に「砂男」を読んだときの感想は「気味が悪い」でした。そのうえアクションシーンも多めで過激な要素が盛りだくさんです。

シリアルキラーとの対決という点では、警部セルヴァスの事件ファイルと共通点がありますが作風は全く違います。

ヨーナは細かいことを考える前に暴走するタイプ、セルヴァズはインテリで考え抜くタイプです。どちらかというとメンヘラなセルヴァズのほうが私は好みです。しかしこのヨーナ・リンナのシリーズにはイロイロと難癖をつけながらもまた読んでしまう中毒性があるのです。

ただ危険な中毒性というわけではなく、閉鎖病棟が舞台になったり、催眠療法の精神科医がでてきたりして精神医学の世界が興味深く描かれています。これはは重要な点だと感じています。著者はもしかしたら洗脳や人を支配する術を熟知しているのかもしれません。

それにしても北欧の幸福度の高い国には、なぜ過激なミステリ小説が多いのでしょうか。

これは私の勝手な憶測ですが、すべての人間の中には何かしらの残虐性が潜んでいるのではないかと思っています。その残虐性を開放するために人々は平和な世界に住みながら過激なミステリ小説を好んで読んでいるのではないでしょうか。

それでは、まずは「おもな登場人物」の紹介を。そしてその後、簡単に各作品の内容に入っていきます。


おもな登場人物


ヨーナ・リンナ 

国家警察の警部。18歳のときにパラシュートレンジャーとして兵役した後に警察大学に入る。ナイフや銃剣、拳銃を使用した接近戦の実線教育を受けたことがある。


サーガ・バウエル

公安警察の警部。高度な尋問技術の専門教育を受けた女性。初登場時は27歳。5歳のときに両親が離婚。その後、母は病死、心臓専門医の父親とは13歳のとき以来疎遠になっている。


エリック・マリア・バルク

ヨーナの友人。精神科医で催眠療法の専門家。


ユレック・ヴァルテル

ヨーナと因縁の対決を繰り広げるシリアルキラー。人心操作術に長けている。


スンマ

ヨーナの妻。ユレックの脅威から逃れるため交通事故で亡くなったことにして秘密の場所で名前を変えて暮らす。ヨーナと再会したときは末期癌で療養中。ヨーナと最期の6か月を過ごした後で亡くなる。

ルーミ

ヨーナの娘。母と一緒に秘密の場所で名前を変えて暮らす。ユレックの脅威が去ったと判断した後はパリに留学する。


ヴァレリア

ヨーナの高校時代のクラスメートで初恋の相手。「ウサギ狩り人」で初登場しヨーナの恋人になる。



 砂 男 


ある雪の夜に一人の若い男性が鉄道橋の上で保護されるシーンから始まります。彼の名はミカエル。ベストセラー作家の息子で13年前に行方不明になり、7年前に死亡が宣告されていることが判明します

13年前、ヨーナは同僚サムエルと組んで行方不明者の調査をしました。

1人目の失踪者は55歳の女性。夜の散歩に出かけそのまま消息を絶ち、その後、女性の義母と兄も行方不明になっています。

その他に何名かが家族共々忽然と姿を消していることが判明します。

同じ条件に該当したのは45名にものぼりましたが、捜査は難航し予算も打ち切られます。あきらめきれず週末を利用して捜査を続けるヨーナ。そんなときにミカエルと妹のフェリシアが姿を消したのです。

行方不明事件の共通点は事件発生後に家族も忽然と姿を消していることでした。ヨーナとサムエルはミカエルの母にも危険が及ぶのではないかと考えて張り込みを続けます。

しかし何事も起きず数日が経過していきます。諦めかけたタイミングでヨーナは不審な男を見かけ、森の中まで追跡し逮捕します。

そしてついに、気味悪い事件の全貌が明らかになっていきます。誘拐した人間を棺に入れて空気穴をあけ土に埋める。掘り起こして食事を与えてまた埋めるというものです。

犯人ユレックは閉鎖病棟に収容されますが、ユレックの残した「サムエルとヨーナの妻子も姿を消す」という予言通りにサムエルの妻子は姿を消します。

ヨーナは不安を抑えられなくなり、妻子と一緒に逃げることも考えはじめます。

13年後、行方不明になっていたミカエルが生還し事件は甦りました。子ども2人を10年以上も監禁する理由はなにか。ミカエルの妹はまだ生きているのか。

数々の疑問を解決するためには、ユレックに再び尋問をするしかない。公安警察のサーガが閉鎖病棟に潜入することになりました。

後半はサーガVSユレックとヨーナの地道な捜査が交互に語られていき、ユレックの子ども時代にまで遡って真実が明らかになっていきます。

普通は措置入院した殺人犯のその後を知ることは難しいと思います。完全なるエンタメとして楽しむしかないと理解はしていますが、医師が患者を人間扱いしていなかったり、さまざまなシーンで息苦しさを感じることは否めません。

ユレックの脅威でプライベートな生活も何もかもが崩壊しかけているヨーナはこれからどうなるのでしょう。

アクションシーンが多く公安警察のやりたい放題で読むのが大変でした。今まで読んできたミステリの中でもトップクラスの残虐さですが、スウェーデンが福祉国家として成熟していなかった時代のアレコレなどは興味を持って読める内容です。



 つけ狙う者



国家警察の公開メールアドレスに意味不明なビデオが送られてきます。その後、ビデオに写っていた女性が殺され、次々とビデオが届き、独身女性の連続惨殺事件へと発展していきます。

共通点は、どの被害者も顔面を傷つけられていること、犯人が犯行の直前に被害者の姿を撮って警察に送りつけてくることです。

警察は過去の犯罪歴から強迫的な執着を持つ性犯罪者の洗い出しを進めていきますが、容疑者らしき人物は浮かびません。

今回から新たに捜査班に加わったマルゴットは連続殺人犯のスペシャリストです。マルゴットは3人目の子どもを身ごもっています。(妊娠中に凶悪犯人を追い詰めるというのは私たち日本人の感覚では考えられないことです)

マルゴットはヨーナのオフィスを引き継いで捜査の指揮をとります。前作であまりにも精神的に打撃を受けていたヨーナはどうなったのか、読者の興味はこの点だと思います。

シリアルキラーから守るため妻子を交通事故で死んだことにして新しい身分を与えて匿ったヨーナ。そのヨーナ自身も姿を消してしまいましたが、本書の序盤では自殺という扱いになっています。

しかし安心してください。シリーズの主人公はヨーナですしシリーズはまだまだ続くのですから・・・(著者の策略に引っかからずに読み進めてください)

公安警察のサーガも登場します。ヨーナは生きている「ユレックが死んで脅威はなくなったと伝えなければならない」強い信念のもとヨーナ捜しが続きます。

もう1人、捜査に協力して大事な役目を果たすのが精神科医のエリックです。

事件の第一発見者に催眠聴取を行ったエリックは、遺体が奇妙な姿勢を取らされていたことを知ります。

エリックの脳裏に浮かんだのは9年前の事件でした。その事件の容疑者であるロッキー牧師は、エリックの精神鑑定により医療刑務所の精神病棟に送致されています。

あの牧師は釈放されたのだろうか。もしもまだ収容中だとしたら、事件に真犯人がいて今も凶行を繰り返しているということになる・・・疑心暗鬼になるエリック。

後半はエリックの仕事、恋愛、事件関係者との接点などが語られていき、まるでエリックが主人公になったかのような展開になります。

この作品はシリーズの中で一番推理を楽しめる内容だと思います。精神医学や催眠、精神鑑定なども興味を持って読めるポイントになっています。

さらに大きなポイントはヨーナとエリックが友人であること、エリックは警察に戻ったヨーナを助け、ヨーナはエリックを救うために奔走します。しかし、友情物語というにはあまりにも壮絶な事件であり、またもやヨーナは重荷を背負うのです。



   ウサギ狩り人   


今回はストックホルムの高級住宅街で外務大臣が殺され、サーガの出番となります。

殺害現場に居合わせた売春婦は犯人が男の名前を口にしたことを覚えていました。シリアのテロ集団と関わりがあると思われるその男「ラティエン」は服役中であることが判明し、サーガは実にサーガらしい計画をたてます。

前作までとは少し違ったテイストで始まり上巻からスピーディに捜査は進みます。テロが想定されること、公安が動いていることも大切な要素になります。

ヨーナは前作の捜査で違法な手段を用いたとして刑務所に入っています。サーガの計画とはヨーナが刑務所内でラティエンと接触してテロ組織の連絡先を聞き出す。最終的にはヨーナを出所させてテロ組織へ潜入させるというものでした。

公安は、この事件は外務大臣だけでは終わらず、第2の事件は次の水曜日に起きると考えています。

今回は緊迫した事件の捜査の裏側でヨーナの新しいロマンスもタップリと語られていきます。結局このシリーズは、どこまでいってもヨーナはどうなっていくのかを追い続けるようにできているのかもしれません。

捜査のほうはヨーナとサーガで連続殺人犯の動機に迫っていきます。大量殺人にもそれぞれの特徴があること、犯人はどのタイプなのかを慎重に検討するヨーナ。

シリアル・キラーは冷却期間を置いて次の犯行におよぶ連続殺人犯。
スプリー・キラーは2人以上の殺害を冷却期間なしに行う連続殺人犯。
ランペイジ・キラーは一度に大量に大勢の命を奪う大量殺人犯。

さらに子ウサギが10羽・・・という動揺が何かしら絡んでいる可能性が浮上し、クリスティのマザー・グース関連の作品を思い浮かべる展開になります。

忘れてはいけないのが、外務大臣の事件と並行して進むもう一つのストーリーです。テレビに出ている有名シェフが酔って外務大臣宅のプールに侵入して悪戯した騒動ですが、このシェフの諸々がどう絡んでくるのでしょうか。

後半は序盤のテロ騒動は何だったのかと思うほど、まったく違う雰囲気で進んでいきます。

ミステリ要素も面白いのですが、今回はヨーナのロマンスが大きなポイントになります。高校でクラスメートだったヴァレリアとはヨーナが刑務所に収監されてから再会します。

お互いに初恋の相手なのですが、ヴァレリアは違法薬物で刑務所に入ったことがあり警官になったヨーナとはあまりにも世界が違うため疎遠になっていました。

刑務所に面会に行くヴァレリア。その後、有罪が取り消されるヨーナ。ヴァレリアと一緒に新しい人生を歩むという選択肢も含めヨーナは揺れ動きます。

警察の捜査に加わってはいるものの、ヨーナはもとのような警部の立場ではありません。ヨーナは警官以外の生き方を見つけることができるのでしょうか。このような微妙な二人の関係性はこのあとの作品にも影響してきます。




 墓から蘇った男 


ヨーナはストックホルム市内で地方警察官として働いていますが、数週間後には警部に復職し以前の自分のオフィスに戻ることになっています。

恋人ヴァレリアの経営する養樹園で週末を一緒に過ごしながら庭仕事をして将来のことを話し合う二人。ヴァレリアはヨーナが警官には戻らないと考えていたため多少の諍いはあったものの幸せに過ごしています。

そんな中で、オスロの集合住宅で男の死体が見つかります。室内の冷凍庫には多数の切断された人体のパーツがありました。そのパーツの中からヨーナの亡妻スンマの頭蓋骨見つかり、ヨーナは大きな衝撃を受けます。

ヨーナの頭の中にユレックの呪いの言葉が蘇ります。サムエル(ヨーナの元同僚)の息子は消えるだろう。サムエルの妻も姿を消す。ヨーナの妻と娘も消えるだろう。「君を泥の中で踏みにじってやろう」

完全復活目前だったヨーナはパリに留学していた娘を呼び戻し、すべてを捨てて再び秘密の場所へ旅立ちました。

ユレックの脅威をヨーナと同じレベルで考えることができないヴァレリアは一緒に行動することを拒みますが・・・ヴァレリアに危険が迫る気配が・・・この辺りはザワザワ感が止まらなくなります。

何度も再生してくるユレックはもちろん気味が悪いのですが、それよりも怖いのはユレック自身が作り上げた自分物語です。すべてが復讐につながる物語。それは第一の標的を苦しめるために一番大事な家族を奪う。しかし殺しはしない。生かしておいて標的をジワジワと追い詰めて自殺させるやり方なのです。不気味なのはそんな物語に酔っていることです。

そのころ、サーガは疎遠になっていた父と和解しダウン症の妹ペレリーナに愛情を注ぎながら幸せに暮らしていました。自分が間違いなくユレックを撃った。ユレックが生きているとは信じられない。サーガは注意を怠ったことで大きな渦の中に巻き込まれていきます。

一方でヨーナはしっかりと仮説をたてたうえで、サーガとは正反対のやり方でルーミを守ろうとします。大きな犠牲を払ってユレックを追い続けるヨーナの行動には賛否がわかれるような気がします。

イロイロと気を揉むことが多いのですが、後半はテンポよく面白い展開になります。そしてまた続編へ期待を持たせる著者の策略にハマってしまうのです。

このあとのことは、実際に読んでみてくださいとしか言いようがありません。何を書いてもネタバレになりそうです。



   鏡の男   


ヨーナは国家警察に戻っています。ヴァレリアとの関係も良好といっていいでしょう。しかし
前作でヨーナが娘ルーミの眼前で連続殺人犯と対峙したことが原因でルーミとの間はギクシャクしています。

今まで知らなかった父の凶暴な姿を見てしまったルーミ。賛否がわかれるであろう救出劇のすべてを背負って生きていくにはルーミはまだ若すぎるということでしょう。

そして今回もまた少女連続殺人事件が起きます。

冒頭で語られるのは16歳の少女ヤンヌが学校帰りに何者かに連れ去られた事件。その事件と並行して進んでいくのは16歳の少女アリスを事故で失った夫婦の物語です。

アリスは父と一緒に冬の湖に釣りに行き氷が割れて湖に転落しました。1人だけ助け出された父のマルティンは重いPTSDを患い苦しい日々を過ごしています。マルティンの妻パメラは献身的に夫に尽くしながら自分自身の絶望感と闘っています。

そしてヤンヌが姿を消してから5年が経過したある日のこと、公園のジャングルジムに吊るされたヤンヌの死体が見つかります。

マルティンは日課の犬の散歩で公園に行き、偶然ヤンヌの死体を見てしまいます。警察はマルティンを犯人と思い込み拘束して尋問しようとします・・・2つのストーリーがここでつながるとは・・・という感じです。

強引な取り調べが始まりますが、マルティンは妄想性パーソナリティ障害のうえ記憶障害もあり、ヤンヌの死体が見つかった夜のことが思い出せません。

そこでヨーナの友人で(つけ狙う者で活躍した)催眠療法の専門家エリックが登場。マルティンの記憶を呼び戻す協力をします

マルティン夫妻はそんな騒動の最中でも失った娘の代わりに養子を受け入れようと奔走しています。マルティン逮捕のニュースで二転三転する状況の中で今度は養子の候補として面談を繰り返していた少女が行方不明になります。終盤は意味不明なほどスピーディな展開で進むため、ついていくのが大変でした。

今回は割と早い段階で捜査線上に謎の男が浮かび、この男の正体を暴くことがポイントになっていきます。

イロイロと疑問点もあるのですが、それでも今までの作品と比べるとユレックの脅威がない分だけ読みやすいと思います。

重いPTSD患者の行動パターンや催眠の手法、多重人格などがどのくらいリアルな内容なのかはわかりませんが、かなり読み応えのある内容が詰まっているのも事実です。

ヨーナはというと、公園で吊されていた遺体の頭部に小さい烙印が押されているのを発見し、催眠で得た目撃証言と僅かな手がかりを合わせて事件を追います。独特の推理が周囲に理解されず苦しむというお約束の試練も待っています。

それでも同僚の誤認逮捕の責任をも引き受けて謝罪したり、しっかり参考人の話を聞こうとする姿勢を見せるなど、今回はヨーナに関する納得の場面が増えています。

※本作には巻末に著者メッセージが付記されています。それを読むと社会派ミステリというには残虐すぎる作品ですが、エンタメの中に込められた著者の問題提起は深いものがあることがわかります。

世界で毎年8万7千人もの女性が殺され、その半数が自身のパートナーや家族の手によって命を奪われているとのデーターもあるそうです。現実は小説よりも怖いのかもしれません。




   蜘蛛の巣の罠 


人々の頭の中に入り込んで人心を操ろうとした連続殺人鬼ユレックとの闘いは終わったはずなのに・・・
サーガのもとにユレックを連想させる葉書が届きます。

そしてその葉書をサーガが受け取ってから3年後、国家警察長官マルゴット・シルヴェルマンが遺体で見つかりました。

現場には葉書の記述どおりの遺留品が残され、サーガ宛に犯行を予告するフィギュアが届くというまたまた不気味な展開になります。

サーガは公安には戻らずにヨーナと一緒に働くことを希望していました。偶然と言っていいのでしょうか、サーガが事件のヒントを握ったことで国家警察チームに加わります。

2人目の被害者は牧師、3人目はサーガと同期の警官、おそらくまだまだ続くと思われる
新たな連続殺人。

すごいスピードで次々と殺人事件が起こり捜査陣も読者も振り回されている感じです。今までとはテイストの違った事件と警察関係者まで殺されていく展開ってどういうことなのでしょうか。

このシリーズは当初から全8巻と著者が決めていたそうですが、本書は「催眠」から数えると9巻目になります。本来は終わるはずだったシリーズがユレックの死後も続いていることに意味はあるのでしょうか。シリーズ一新のためにレギュラー陣総入れ替え殺人が起きるということはあるのか、などなど???の連続です。

次々とフィギュアが届き謎かけを必死に解く刑事たち。それを嘲笑うかのごとく捕食者による殺人は着実に遂行されていきます。おそらく被害者は9名になると思われます。

ヨーナは事件をユレックの信奉者による犯行ではないかと疑います。しかしすべての事件はサーガと何らかの関わりがあるため警察上層部はサーガを捜査から外そうと画策しますが・・・そうこうしているうちについに殺人鬼の魔手はヨーナの背後にも迫ってきます。

被害者の多さはテロを除けば今まで読んだミステリの中でトップクラスかもしれません。警察小説の側面があるならば普通はここまで行かないはず。とはいえ、怒涛の展開で面白かったのも事実です。

追い込まれると、お約束のように組織のトップは最悪の選択をするものなのだと思い知らされるシーンがたくさん出てきます。そのトップが失脚するとスッキリするのかもしれないと思ってはみるのですが、流石にここまで悲惨な目に合うと同情してしまいます。

警察関係者を含む多くの人々が亡くなりました。

さまざまなことに決着がついたというには、あまりにも悲惨な事件でした。

それでもヨーナとヴァレリアが幸せを手に入れたというハッピーな出来事もありました。

イロイロ考え合わせてみても、このシリーズはこのまま本当に続くのだろうかという疑問はやはり残ります。

ここまで読んできて思うこと・・・それは、ユレックがこのシリーズの根幹にありながら、ユレックの登場しない作品「つけ狙う者」と「鏡の男」が非常に面白かったということです。

さまざまな設定とエンタメ性を考慮はするものの、シリアルキラーはもういいかなという感じです。

食傷気味ではありますが、「残酷だ!気味が悪い!」と言いながらここまで読んできました。もしかしたら私も著者に操られていたのかもしれません。


(もしもシリーズが続いて、新刊が出た場合は更新していきます)



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