追熟読書会: まじめに生きるのを恥じることはない

まじめに生きるのを恥じることはない


ジョン・ウッデン 著 

ジョン・ウッデンは元バスケットボール選手、指導者。卓越した指導力でUCLAを7連覇を含む10度の全米制覇に導いた。1960年に選手として、1973年にヘッドコーチとしてバスケットボール殿堂入りを果たし、両部門で殿堂入りした初の人物となった







本書を私に紹介してくれた知人はタイトルが凄いから電車の中で読むことができないと嘆いていたが、自分にとってはバイブルだとも言っていた。私が購入したのは2016年。古本を3000円で購入した。この本で人生が変わったと言う人がいるのなら3000円出してでも読んでみようと思った。ちょっとした好奇心からだったが私にとっても大切な一冊となった。

今回再読をしたきっかけは、自信を持てずに悩む若い人たちの姿を度々見かけるようになったらである。まだ経験が浅いのだから自信がないのは当たり前とも思うが、ジョン・ウッデンのように体系立てて説明できる年長者が減っているのも事実かもしれない。

本書は子ども時代の父親との思い出から始まっている。「お前たちは他の人と同じように優れているんだ、他の人よりも優れているというわけではない」と何度も父は繰り返した。ジョン・ウッデンにとって父親こそが最高の手本だった。


『成功のピラミッド』
  • ジョン・ウッデンといえば「成功のピラミッド」と言われるほど有名だが、そもそも成功とは何なのか。結論から言うと、ジョン・ウッデンは成功を「自分がなれるベストの状態になるため最善をつくしたと自覚し満足することによって得られる心の平和」と定義している。
  • 人を教える立場になったとき、成功を収めるために必要なものは何かをチームの選手たちにも理解して欲しかった。そのために成功とは何かを考え続け、ついに14年もの年月をかけて成功のピラミッドは完成したのである




  • ピラミッドにおけるそれぞれのブロックの位置と順番には重大な意味がある。まず土台を築いてから、その上にブロックを積み上げて建物を作り、最後に頂点に達する。
  勤勉

ピラミッドの最初の礎石である「勤勉」とは、一生懸命に努力するというただそれだけの意味である。努力に取ってかわれるものはない。価値あるものは全て努力によって生まれる。

  情熱

ピラミッドのもう一つの礎石である「情熱」とは、自分のしていることを愛し自分の仕事に心を込めることである。情熱がなければ能力を十分に発揮できない。

  友情

お互いの評価と尊敬と献身から発せられる強力なエネルギー。お互いによいことをし合う双方向の関係である。

  忠誠心

この人のためならと思える人がいてはじめて心の平和が得られる。だからこそ最高レベルの課題に取り組めるのである。

  協調性

共通の目標を達成するためには、あらゆる方法で一緒に取り組む必要がある。協力体制ができていれば同じ方向に進んでいくことができる。

 

  • 次にピラミッドの2段目 

  自制心

感情をコントロールできなければ、肉体的にも精神的にも力を発揮することができない。

  注意力

われわれは視野が狭くなって目の前にあるものが見えていない。周りでは四六時中何かが起こっている。注意力さえあればそこから知識を得ることができる。

  行動力

失敗を恐れず決断し、行動を起こす勇気のことである。

  集中力

誘惑に抵抗して信じる道を歩み続け、決意を秘めて目標に集中する能力である。粘り、不屈の精神、忍耐力を意味する。

 

  • 次に3段目はチームを作るための要素。

  コンディション

肉体面のコンディションのほかに、精神的、道徳的なコンディション作りも付け加えなければならない。

  技術

ピラミッドの中心にくるのが「技術」である。自分の知っていることを把握し、それを迅速かつ適切に遂行できなければならない。

  チームスピリット

全体の利益のために、自分の利益や栄誉を犠牲にする精神。これは、他の人々のことを考えるという意味である。

 

  • ピラミッドの頂点の近くには「平常心」と「自信」がある。この2つの重要なブロックは、他の全てのブロックを置いた結果として手に入るものなのだ。無理に身につけることはできない。適切な準備をすることによって自然に身につくものなのでピラミッドの構成順位は非常に大切である。

  平常心

これは自分であること、演技をしないこと。自分でない他の人物のように振る舞わないこと。他人の期待ではなく自分の期待に応えること。自分がなれるベストの状態になるために、必要なのが平常心である。

  自信

他人からの信頼を得たいならまず自分で自分を信じなければならない。もし適切な準備をしていないなら自信をもつことはできない。

 

  • ここまで積み上げてきたブロックは、究極的には「競争力」のために必要なものである。

  競争力

競争力とは何か、それは状況が困難になったときに挑戦を楽しむことだ。真の競争者は、非常に大きな課題に挑戦することが爽快であることを知っている。そういう課題を恐れないし、むしろ探し求める。

 

  • 最後の仕上げとして「忍耐力」と「信念」

この2つの不可欠な資質は、他のそれぞれのブロックをそれぞれの位置にしっかりと組み込んで接合するためのモルタルのようなものである。ほとんどの人は忍耐力に欠ける。卓越したものを創造するには時間がかかる。良いものは常に時間がかかるし忍耐力が必要になる。我々は、自分がすべきことをしている限り、物事は本来あるべきをあるべきように展開するという信念を持たなければならない。

 

ピラミッドの頂点にあるのは成功である。競争力のブロックの上にあり、さらに忍耐力と信念の上にある。全ての資質が組み合わされた極地、それが成功である。すべての人が成功のブロックを内に秘めていて、発揮されるのを待っているのである。


後知恵で自分を責めない

  • 過去を振り返ると、ああしたらよかった、こうしたらよかったと思うことがいくらでもある。そこから何かを学べるのであればそれで良い。しかし後知恵で自己批判しては絶対にいけない。それは無駄な努力である。物事は常にうまくいくとは限らないが、それはただ上手くいかなかっただけなのだ。心配したり不平を言ったりして状況が変わるだろうか。そんなことは絶対にない。


『やる気を起こさせる』

  • 誇りは恐怖心よりも人々にやる気を起こさせる。恐怖心をあおれば短期的には人々に何かをやらせることができるかもしれない。しかし長期的な視点から見ると、人々にやる気を起こさせるためには誇りを持たせることの方がずっと効果的だ。相手に敬意を示して初めて相手は誇りを持つ。このことを忘れてはいけない。

 

『人格』

  • 自分の評判よりも、自分の人格により多くの関心を持とう。人格こそが本当の姿なのだ。評判というのは他人からどう言われるかに過ぎない。評判は人格に基づいていることもあるが、いつもそうとは限らない。人格とは自分の感情や環境に押し流されることなく、物事に対して分別ある対応をすることである。
  • 能力があれば頂点にたどり着くことができるが、それを維持するには人格が必要である。人格の大部分は自制心である。大切なのは頂点にたどり着いた後なのだ。それまでと同じくらいかそれ以上に一生懸命に努力し続けるには、真の人格が必要になる。

 

『小さな進歩』

  • 毎日少しずつ進歩していけば、やがて大きなことが起こる。毎日少しずつ調子を上げていけば、やがて大幅にコンディションが向上する。明日や明後日でなくても、いずれは大きな収穫が得られるはずだ。すぐに大きな進歩を期待してはいけない。1日ずつ小さな進歩をしていくのだ。それが進歩するための唯一の方法なのである。

◆こうして読み直してみても古さを全く感じない。それどころか今の時代にマッチしているように思える。何度読んでも刺さる言葉が多い。自信とはこれほど多くの土台の上でなければ成り立たないものなのかと少し悲しい気分にもなる。さらに言えば、自信は無理に身につけることはできないのである。自分の20代のころを考えると…全く根拠のない自信を振りかざして危うい生き方をしていたことは否めない。もしかしたら最近の若者は私たち世代よりもしっかりしているのかもしれない。1日ずつ小さな進歩をしていくのだ。それが進歩するための唯一の方法なのである」という一文に励まされながら読了した


※ジョン・ウッデンの本はいまではなかなか入手困難な状態になっているが、ネットで検索すると成功のピラミッドに関する記事が複数ヒットする。NewsPicksで2015年に取り上げられた記事が面白かった→NewsPicksの記事はコチラから














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