2023/06/07

【選択理論】明日からの人生を楽にする技術 (1)


米国ウイリアム・グラッサー協会インストラクター 須山康男先生の著書。

須山先生は外資系の会社に移った際に、日本企業との違いや外国人の自己主張の強さに戸惑い、何かきちんとした手法を身につけなければいけないと考えた。試行錯誤を繰り返すなかで選択理論と出会ったとのこと。ご自身の体験をもとにした解説は非常にわかりやすい。今まで読んだ選択理論の本で一番わかりやすいかもしれない。

 



本書は身近な人間関係から始まり、組織の中での人間関係、リーダーシップまで4つの章で構成されている。2006年発売。残念なことに今は古本しか手に入らない。古本屋さんで数万円の値がついていたため諦めていたがメルカリで適正価格のものを発見して購入した。

手に入りにくい本なので印象に残った点を簡単にまとめていきたい。

 

第1章   人間関係を困難にしている要素

私達には周囲に影響を与えたい、他人に自分のいうことを聞いてほしいという欲求がある。この気持ちが昂じて他人を変えようとする行為が「外的コントロール」である。暴力の他に精神的圧迫、強制、非難、批判、脅す、無視する、比較する、差別などがある。肩書にものをいわせることなども外的コントロールになる。

◉なぜコントロールが起きるのか

  • 他人が自分と同じ認識をしていると考えてしまう→現実と呼ばれるものは人それぞれ捉え方が違う。とらえ方の違いは知覚のフィルターと感覚のフィルターを通って認識されることから起きる。  知識の幅、厚み、経験などの違いによって認識は変わるということ。認識が違うとわかると相手の考え方を変えようとする。
  • 相手の価値観が自分の価値観と違う→自分の基準とかけ離れたことを言われたり、されたりすると気分を害する。望んでいる状態と起きている現実のキャップが生じるときに、相手を自分に合わせるように無理やり変えようと考える。
  •  所有の錯覚→子どもは親のもの、妻は夫のもの、部下は上司のもの、社員はオーナー社長のものであるなどの思い込みからくる錯覚はコントロールの土壌になりやすい(馴れ馴れしさはコントロールの始まりである)

◉人は願望に向かって行動を起こす

  • 私達は悩んでいるときは「現状から逃れたい」「周囲の状況を変えたい」と考えるあまりに「自分がどうなりたいか」という肝心な到達点を忘れてしまうことが多い。自分の願望に目が向いたときに、これからの行動に焦点が合い問題解決に向かって動き出す。
  • 相手の願望にすばやく焦点を合わせて話し合いを進めることで効率的かつ適切に問題解決を図ることができる。これは日常のさまざまな場面に有効。

 

一番印象に残ったのは「所有の錯覚」である。親は子どものことを所有物のように考えがちであり、教える責任があると極端に考えてしまうこともある。馴れ馴れしさという表現もドキリとする。忙しい育児のなかでも親自信が自分の感情に気づいていくことは大切なことだとあらためて感じた。また、他人からのコントロールを受けやすい人は、他人に対してコントロールしたがる傾向があるということも書かれている。親から子への、上司から部下への連鎖の怖さも感じた。

 

第2章   組織における人間関係の技術

◉人間関係は技術であり、技術は練習により上達する

  • 体系的に学んでみると人間関係は技術であることがわかる。人間関係を良くするには人間への理解を深めて人付き合いの技術を身につけることが必要。技術は練習による量的な蓄積で質的変化をもたらす。
  • 人柄とは行動のパターンである。意識的に行動習慣を変えていくことで人柄をも変化させられる。
  • 日常生活で欲求を意識して満たしていく工夫がセルフコントロールのコツである→誰でも共通して持っている基本的欲求がある。私達の毎日の生活とは何らかの形での欲求充足をめざした行動である。 
※「愛・所属」「力」「自由」「楽しみ」「生存」の5つの欲求がある。

◉人の行動は内側から動機づけられる(内的コントロール)

  • 人は自分で変わる気になったときに変わる。外側からのコントロールを受けていても最終的には自分で決めて行動してい

※すべての人は堅くガードされた心の扉を持っていて、その扉は内側からしか開けられない(マリリン・ファーガソンの言葉)

  • 内的コントロールが働くためには願望を具体化、明確化する必要がある。新たな行動を起こしたいと思うきっかけは現在の自分に対する気づきである。気づきを得るためには自分自身の中に基準を持っていなければならない。他人からのフィードバックも重要。
  • 人はいつでも最善の行動を選んでいる。他人から見てどんなに馬鹿げた行動であっても当人にとってはそのときにできる最善の行動をとっている。安易な批判は関係を悪化させる。その人の欲求を理解できれば相手に対する見方が変わり、その人との関係に新たな局面が開けてくる。
◉自分で変えられるものと変えられないものがある。

  • 他人の気持ちは直接変えられない。起こってしまった過去の出来事を元に戻すことはできないが、過去の解釈を変えることはできる。将来のために今できることに取り組むことはできる。
  • 私達の感情と体の生理は間接的にしかコントロールできない。感情と生理は行為と思考を上手く操作することによってコントロールできる。
    • イライラを軽減するためには深呼吸を、
    • 落ち込んだときには軽い運動を、
    • 何か事情があるのだろうと思いをめぐらせることで感情の変化を、

※選択理論では私達の行動は4つの要素からなると考えている。自動車つの4つの車輪に例えて、前輪は行為と思考、後輪は感情と生理。この4つが同時に働いているので全行動と呼ぶが直接コントロールできるのは前輪のみ。


◉人間関係はコミュニケーション

  • コミュニケーションとは発信と受信の関わり通じて相手との心の距離を縮めること。
  • 受信→傾聴する。言語的要素だけではなく非言語的要素(態度や表情)も受け止める。
  • 発信→上手く自分を出すことも非常に大切。ビジョンを周囲に上手く伝えて分かち合い協力を得られるようにする。

◉人間関係をよくするコツ

  • ある人との間で基本的欲求の一つ、あるいはそれ以上をお互いに満たしあえるとき、その人とよい人間関係を維持することができる。
  • 大切なことは相手と欲求を満たしあえること、相手の願望に働きかける接し方がその人との関係をよくする。他人の欲求充足を妨げずに自分の欲求充足を行うこと。

 

2章はわずか50ページほどだが、人間関係構築のコツが平易なことばで非常に多く解説されている。複数のカウンセリング実例もある。一番印象に残ったことは人間関係も技術であり練習が質の変化をもたらすということである。こういうふうに考えると挨拶程度の関係でも(実際には挨拶さえ躊躇するような相手もいるのだか)声をかけ続けることの大切さも認識しやすくなると感じた。また、気づきのための批判にならないようなフィードバッグ、関係強化のためのフィードバックをいつも念頭におくことは(難しいが)重要だと思う。

 

今回は第1章と第2章の印象に残った部分をまとめた。

第3章、第4章はこちらから

 

須山先生は南海放送の「ラジオセラピー」で2013年8月25日にお話をされています。誰でも聴くことができます。

ラジオセラピーはこちらから


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