専門職向けではなく友人や家族との日常のコミュニケーションのアドバイスなのでわかりやすい。
ディープ・リスニングとは悩んだり苦しんだりしている人の話に耳を傾けること。本書はこのディープ・リスニングの基本と実例と練習法をまとめた本である。
最近は傾聴という言葉が流行語になって独り歩きしているような不思議な感覚になる。話をまず聞くというのはコミュニケーションの第一歩であることは間違いない。しかし大事なのはどんなシチュエーションで聞くか。傾聴の本の多くが聞くことで収入を得ている相談業の方が書いたものである。友人同士や家族間では一方的に聞くよりもキャッチボールの方が大事になる。
本書は傾聴でありながらも聞くことだけに拘っていないところが読みやすさである。しかし、海外のコミュニケーションと日本人とは違うという問題がある。
私が感じた重要なポイントをまず1つ。
それはメタコミュニケーションというもので、話の中身ではなく「コミュニケーションのとり方」について話すコミュニケーションのこと。
「あなたが話し終わるまで何も言わずに聞いているほうがいいですか」
「〇〇について(悩みや苦しみ)私と話したいですか」
「聞き手」が「話し手」に尋ねる手法のこと。
・話すか話さないかの判断を相手に委ねる。
・話したいのであれば、私は特別な注意を払ってその話を聞く準備ができていると相手に伝える。
・話したくないときは、それを受け入れる。
海外の小説でこういうフレーズに出会うことがあるが日本の日常会話ではほとんど聞いたことがない。勝手な思い込みで話題にしてみたりわざと避けてみたりする傾向が強いのではないだろうか。特に近い関係性の相手に対してはこの傾向が顕著になる。子育て中を振り返ると先生や子どもの友だちから入ってくる情報をもとに親の都合で勝手に話題にしてしまうことが多かった。
本書のテーマ、ディープリスニングは悩んだり苦しんでいる人の話に耳を傾けることである。大事なことはきちんと相手の話に耳を傾けることで聞き手の気持ちも落ち着いた心地よさを感じること。
では、どうやって?
まずは感情の内側に焦点を合わせるためにギアを「ゆっくり」にシフトすることから。話し手は聞き手ゆっくり向きあってもらうことで必死に合わせようとしていた外側の現実から、自分の内的なリアリティに注意を向けることができる。
話し手の邪魔をしない、決めつけない、遮らない、扉を開く鍵の言葉の見つけるなどは一般的な傾聴の本と内容はあまり変わらない。
面白いのは「主役を奪わない」ということ。
話し手が自分で何をするか決め、行動を開始する責任を負っていることを忘れずに、手助けしていくことが大事。
具体的な手順としては、
①
ひとまずトゲを抜く
②
感情の流れにフォーカスする
③
批判されたり笑われたりしないという安心感を与える
④
解決策を探ることを目的とせず苦しみを分かち合う
⑤
逃げない姿勢で聞く
⑥
リバウンドの波を知る
この最後の「リバウンドの波を知る」は解釈が難しい。苦しみは失われてしまったポジティブな感情を表しているそうなので、話が深まっていく中で起きる波の切れ目に注目して、つらい気持ちの背後にあるポジティブな状況を認識できるようにする。ということなのだがこれは難しい。詳しく知りたい方は本書をぜひ手に取っていただきたい。
話し手の言葉の中で感情が込められているキーワードを見つけて、それがどのようなものか「もっと話してもらえますか」などガイドフレーズで方向を示唆していくことがポイントになる。
ここまで読んでも、どうやって聞くのかという戸惑いは完全には消えない。そんな読者(私)のために著者はダメージを与える聞き方、具体的なNGワードも示してくれている。
・こうしたらいいんじゃないかな
・私にも同じことがあった
・あっそれってこうことでしょ
・あなたがどう感じているかわかるわ
・考え過ぎでは?もっとポジティブに考えたら?
・それは前に聞いたよ
・それは、どう考えてもあなたがおかしいよ
・それはワガママ、もっと大人になりなよ
・普通の人はそんなふうに考えないよ、ちょっとおかしいんじゃない?
・世捨人にでもなればいいんじゃない?
などなど、私も無意識に使ってしまっている言葉がある。
最後に話しの途中で話し手に強い感情の波が起きたらどうするか。
答えは穏やかにその場に居ることだがこれは難しい。手を差し出す、肩に手を回す、静かに付き添うなどが聞き手に出来る行動だが、一緒に道に迷わないことが大切。安全な場所を作ってあげて、決してアドバイスを焦らず、私の意見を言ってもいいですかと承諾を得ることも心がけたい。
非常に深い内容なので完全に咀嚼はできでいない感覚が、道に迷いそうになったら本書を開いてみるのがもう習慣になってしまった。
ぜひ、あなたもメタコミュニケーションを。
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