西 剛志(著)
著者の西さんは、脳科学者(工学博士)、分子生物学者。
企業や個人の パフォーマンスをアップさせる会社を設立し、企業から教育者、高齢者、主婦など含めて 1 万人以上をサポートしている。
習慣や思考のクセを脳内トークで断ち切って、自分を変化させて、なりたい自分に近づいていくために書かれたのが本書である。
『言葉の力』
日々の生活の中で、意志が弱く、なかなか思い通りにいかない。そして、自分を責める・・・そんな自分を変えたい!と思う。しかし、自分を変えることができるかどうかに意志が強いか弱いかは関係ない。ではどうしたらいいか、その答えは「言葉の力」を利用すること。言葉があなたが変えてくれるのである。
・あなたが人生で一番会話している相手は、他の誰でもない自分自身である。もし普段使っている全ての言葉が、自分の気持ちを高めてくれたり、目標達成をサポートしてくれたりするものだったら、人生にどんな変化が起きるだろうか。自分に最も影響を与えているのは、間違いなく自分自身。人生は使った言葉の集大成でできているのである。うまくいく人ほど自分との会話が上手い。
『脳内トークとは何か』
①脳内で話した言葉
これが基本的な脳内トーク
②声に出した言葉
自分に語りかける言葉(プライベートトークという独り言も含む)
・そのほかに、他者に話す言葉(対話型)もあるが、①と②の2つを本書では脳内トークとして扱う。
・人はなぜ脳内トークを使うのか。脳は困難を乗り越えるために脳内トークを利用して集中力を高めているからである。自分が何をやっているか、という自分の思考を言葉に出すと作業ミスが78%も減ることが、英国ノッティンガム・トレント大学の研究でわかっている。また、独り言は、セルフコントロール力も高めてくれる。
ここあとは脳内トークの具体的な話に入っていく。わかりやすい言葉を使用しているが、すべて最新の研究データに基づいて書かれている。
(巻末に14ページにわたって121項目の参考文献一覧がある)
『サードアイ』
・まるで他者に話すように主語を二人称、ときには三人称にして自分に語りかけることを「サードアイの脳内トーク」という。これは第三者の視点で外側から自分を見るということ。サードアイの脳内トークは感情をコントロールしやすくなりストレスが軽減される。脳画像の解析でも二人称を使う方が脳内の自制心を司る部分がより活性化することがわかっている。
・本を読んでいるときは約70~80%の人が架空の登場人物の声で脳内トークをしている。この他者の声を脳内トークにうまく活用すればサードアイになる。声が変わると自分の中で印象がかなり変わり、嫌な人格を改善できるきっかけにもなる。
『選択型脳内トーク』
・選択型脳内トークは不安やイライラを遠ざけてくれる。不安を自分で選択していると思うだけで不思議と不安が消えていく。「選択」と脳内トークすると過剰にマイナスな気持ちを自分でコントロールできているというシグナルを脳に送るからことができるからである。また「許す」という言葉も、脳にとっては「選んでいる」ことと同じで「対象を認め選択する」と認知するため、選ぶことと同様の効果を期待できる。
『なかなか行動に移せないときの脳内トーク』
・仕事をやる気にならない。そんなときは「だからこそ」と言ってみる。「仕事をやる気にならない。だからこそ・・・」と言った瞬間に、脳は過去の経験から「だからこそ何が大切なの?」というプラスの言葉を検索し始める。
『意識を変える2文字』
・疲れた、しんどい、大変だ、もう嫌だ、こんなときは「でも」という2文字を使う。
「疲れた。でも頑張った」
「疲れた。でも充実してた」
「疲れた。でもよくここまでやった」
※このような脳内トークは声に出しても心の中で言っても効果は変わらない。
『過去の成功体験から自由になる脳内トーク』
・あの時できたのだから今回もできる。というように成功体験にしがみついて失敗することがある。その場合は「できる」ではなく「できるだろうか」を使ってみる。私達の脳は問いかけられると狭かった視野が広がり、過去に成果が得られた方法よりも良い方法が見つかる可能性も広がる。つまり「できるだろうか」と問いかけると、前例よりも良い方法を見つけられるだけでなく、脳のパフォーマンス面から高めることができるのである。
『疲れたと感じたとき楽になる脳内トーク』
・疲れたときは逆に積極的に何もしないことでエネルギーが充電される。うまくいく人ほど「充電中」というような脳内トークをしている。
・気を張りすぎて疲れてしまうこともあるが、そんなときは「心のネジを緩める」と脳内トークをしてみる。なかなか緩まないときは、心のネジを緩めることを「許す」と脳内トークをしてみる。
『脳内トークと会話力』
・自分との会話がうまくなると、相手との会話もうまくなる。いきなり面と向かって誰かと会話の練習をしようとすることは、サンドバックさえ叩いたことがないのにボクシングの試合に臨むようなもの。まずは自分との会話を上達させよう。
『うまくいっている人の脳内トーク』
・人は命令されると逆のことをしたくなる性質がある。また、行動を強制しようとする人に対して脳は警戒する。強制してくる人とは信頼関係を築けないと感じることもよくある。意見を言いたくない相手から意見を聞き出したいときに「意見を言ってほしい」と伝えても自発的に引き出すことは難しい。このときの脳内トークは「わかるよ」「それで?」を使う。相手に言葉で言わなくても心の中で「わかるよ」と脳内トークしていれば、相手を見つめる眼差しや態度を通して相手を理解しようとする気持ちが自然と溢れてくる。
・無理に ○○する必要ないよ、という脳内トークは自然な形で、前向きになるメッセージを伝えることができる。
無理に頑張る必要はないよ。
無理に行動しようとする必要はないよ。
無理に笑顔になろうとしなくていいよ。
・怒るという感情は、二次感情といわれているが、悲しい気持ちから自分を守るために発生する感情である。感情的になるのは、相手に注意をしたり、こうなってほしいという気持ちがあるから。そんなときは感情ではなく、事実を伝えよう。「理由を添えて事実を伝える」。これは、日本女性誌売り上げナンバーワンを達成した情報誌ハルメクの編集長、山岡朝子さんの言葉。
『うまくいかない人の脳内トーク』
・真剣にやらなければいけない
何事も真剣にやりすぎると、脳の疲労物質グルタミン酸が溜まってしまい、逆にパフォーマンスが下がってしまう。
・成果を出さなければならない
とにかく大きな成果ばかりを日々追い求めてしまう。その結果、日々の生活の中で幸せを感じられる回数が少なくなり、脳の状態も下がる。
・意志の力が強くなければいけない
意志の力だけでなく環境の力も一緒に利用すること。環境を変えることで劇的に良くなることがある。
・毎日続けなければならない
やっているうちに義務になって、どんなに良い習慣も効果がなくなってきてしまう。3日坊主は悪くない。好きなときにやればいい。気楽に脳内トークしてみることが大事。
『NG脳内トーク』
・わからない
この言葉を発した瞬間に脳は思考停止する。かなり危険な言葉。「わからない」を使ったときには「もしわかるとしたらどんな方法があると思いますか」という質問をしてみる。
・できない
これも使った途端に思考が停止してしまう。できないと言った瞬間に脳はできない状態をイメージするため、そこで思考がフリーズしてしまう。「できない」ではなく、「できる理由を探していくこと」がうまくいく鍵になる。
・知っている
それはもう知っていると思った瞬間に、脳はこれ以上学習する必要はないと判断して思考を停止してしまう。
『最後に、』
1日に数千から数万回も使っている脳内トークその一つ一つが、もし自分の気持ちを高めてくれて、あらゆる問題や課題を解決し、成長させてくれたら毎日がよりわくわくした人生になっていくだろう。自分が変わるためにはいろいろな方法があるが私は脳内トークで大きく変わった。変わる方法は人それぞれのやり方がある。より多くの人がこの脳内トークの可能性を知って、それを自分にも周りの人にも使ってもらえる世界が実現できたらこれ以上嬉しいことはない。
『読了して感じたこと』
・脳内トーク。インナートーク、セルフトーク、頭の中のひとり言、内言、などといわれている「言葉による思考」のことが書かれています。「人生は使った言葉の集大成でできている」・・・言葉を変えることで今まで上手くいかなかったことも変化し始める。これは多くの人が実は実感しているのではないでしょうか。それでもなかなか自分にとって良い言葉を選ぶ習慣をつけるのは難しいものだと思います。ついつい元の思考に戻っていきます。そんな日々を繰り返すなかで私が自然に興味を持ったジャンルといっていいでしょう。本書は繰り返し何度か読みました。他の本と比べると平易な言葉で読みやすく身近な例が非常に多く掲載されています。私がピックアップしたのは、ほんの一部ですが、読書メモを見ただけでも毎回多くの気づきがあります。興味のあるかたはぜひ本書を読んみてください。
・一番気に入っているのは「いきなり面と向かって誰かと会話の練習をしようとすることは、サンドバックさえ叩いたことがないのにボクシングの試合に臨むようなもの。まずは自分との会話を上達させよう」という一文です。誰にでも感謝の言葉やポジティブトークが難しいときがあるのではないでしょうか。そんなときは、まず心の中で「ありがとう」と言ってみる。そうすると言った本人が幸せになる。そしていつかは声に出して言えるようになるということなのでしょう。
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