- ストレスの最も一般的な定義は「刺激によって心身にひずみが生じた状態」である。
- 刺激は大きく分けて2つあるが、この刺激のことを「ストレッサー」と呼ぶ。
①物理的刺激
温度や湿度、痛み、かゆみなど物理的実体のある刺激。
②心理的刺激
心に影響を受ける出来事。2つに大別できる。
- ライフイベント(人生で起きる重要な出来事)
- デイリーハッスル(日常の些細な出来事)
- 刺激がそのままストレッサーになるわけではなく、個人の特性によってストレッサーとなるか否かが決まる。
- 人間は明らかに常識を逸脱した非合理的な思考に陥ることがある。思考が非合理・非論理的になっている状態が「認知のゆがみ」である。頭の中で発生させやすい人ほどストレスを抱え込みやすい。
①刺激(ストレッサー)に対するコーピング刺激を明確にし除去や軽減を図る。必要があれば、堂々と逃げるということも重要なコーピングの方法。②評価に対するコーピング非合理的な思考を合理的にしていくことが評価に対するコーピング。③反応に対するコーピング緊張したら深呼吸する、疲れたら温泉に行くなど多くの人が何らかの形ですでに実践していることを意識的に行うこと。④社会的支援というコーピングどうしていいかわからなければ誰かに(どこかに)相談する。
- まず自分自身を知る。約30ページにわたってストレスパターン診断テストと解説が掲載されている。ストレスには6つのパターンがある。
①イライラ型…自己過信型(べき思考)
②オドオド型…自信喪失型(失敗への恐れ)③クヨクヨ型…過去悔恨型(自責が強い)④モンモン型…未来不安型(青い鳥思考)⑤ヘトヘト型…疲労困憊型(完璧思考)⑥ムカムカ型…人間関係誤解型(心理深読み型)
- セルフトークとは、その人が心の中で自分に語りかけている言葉のことで、いわば心の中の口ぐせのようなもの。何か良くないことがあると「自分はついてないな」と心の中で思ってしまう。そうした言葉がセルフトークである。
- セルフトークはその人の「認知のあり方」を表現している。単なる言葉の破片の中にその人の意識が強く投影されている。そのため自分を知る道具として使うとともに、その人の「認知のあり方」を変える道具としても機能させるのが、心理学的な意味のセルフトークである。
- セルフトークは、人によって異なるが、マイナスのセルフトークとおぼしきものの多くは、共通の表現をもっている。
- 「なぜ自分だけがこんな目に合うのか」というセルフトークは最も典型的なもの。「自分だけ」のほかにも「○○してくれない」「どうせ」「ついてない」「いつも」などがある。
- セルフトークの転換は、認知のゆがみを変えるための最も簡単で効果的な方法である。人間の心と言葉は不可分に結びついており、言葉を変えればやがてその人の心を変えることになる。これは実際に効果のあることもわかっている。
- しかし、ただやみくもに変えればいいというものではない。認知のゆがみを矯正していくには、3つの原則(セルフトーク転換の原則)を知っておく必要がある。
原則1、非論理性を正す
マイナスのセルフトークには、非論理性が含まれている。「いつも自分ばかりひどい目にあう」というセルフトークは、何回かひどい目にあったとことが根拠になっている。しかし「何回か=いつも」という公式にはならないはずである。この言葉を発する人は非論理性に気づいていない。まずは非論理的なものを自覚し、論理的なものに転換する必要がある。
いつも自分ばかりひどい目にあう→ひどい目に会うこともあるが、そうでない場合もある。というふうに転換させる。
原則2、今ここで考える悩んでも過去は変えられないし、未来のことを考えすぎると必要以上の不安感に襲われることになる。今ここで考えるとは、過去や未来に余計なエネルギーを使うのではなく、今できることに意識を集中する。まずできることをやってみるという行動重視の姿勢ともいえる。原則3、ありのままを受容する私たちは他人との比較で自分の現状を考えた場合、より強くストレスを感じがちである。大切なのは、自分の現状をありのままに受容すること。他人は他人、自分は自分と割り切った上で、自分のプラス面にできるだけ目を向けるようにすることである。
ストレスタイプ別の望ましいセルフトーク
①イライラ型
自分とは違う考え方の人もいるんだな焦らない、焦らないすべては時が解決する
②オドオド型
失敗は誰でもすること失敗しても自分の他のことでの価値は変わらない何もできないぶん、成長の可能性は人より大きい
③クヨクヨ型
いまできることは何だ悩んでも過去は変えられないクヨクヨは時間の無駄
④モンモン型
いつだって私は幸せものだ明日の悩みをきょう悩まないいまに集中!
⑤ヘトヘト型
肩の力を抜いてみよう断るのも仕事のうちスイッチ・オフ
⑥ムカムカ型
何を言われても自分の価値は変わらない悪口を言われるうちが花だななるほど、人の見方は面白いな
◆望ましいセルフトークの例や問題解決のヒントが数多く書かれている。難しい専門用語は使われていないため非常にわかりやすい。ところが少々煩雑な感じになっている気がする。知識をインプットするよりも、本書では診断をしてみることに意味があるのかもしれない。私の診断の結果は、突出して強い傾向がなかった。僅差でイライラ型になるのかなという感じである。
◆タイプ別の対処法は様々書かれているが、セルフトークの面から考えると、認知のゆがみを修正する言葉を自分の中で用意しておくということに尽きるのかもしれない
◆私がよく心の中でつぶやく言葉は「これもまた過ぎ去ってゆく」である。この言葉はオグ・マンディーノの「世界最強の商人」という本に出てくる。
私は世間を笑おう。笑うことができるのは人間だけだ。
私は世間を笑おう。では、私を傷つけ、涙させ、思わず呪ってしまうような人や出来事に遭遇したとき、どうやって笑顔を保つことができるだろうか。そんな場合、私を救う魔法の言葉がある。この言葉はあらゆる災難から救い出し、バランスのとれた人生へと導いてくれるだろう。
それはこんな言葉だ。「これもまた過ぎ去っていく」
私は世間を笑おう。なぜならば世間のすべてのものは過ぎ去っていくからだ。すべてのものが過ぎ去っていくのであれば、なぜ今日の些細なことを思いわずらう必要があるだろうか。
この言葉が大好きなので、「これもまた過ぎ去っていく」といつも心の中でつぶやいている。日本には諸行無常という言葉があるが、盛者必衰との関連付けで、良いことは長続きしないという意味合いで使うことが多い。しかし悪いことも長くは続かないのである。
本書を読むと、このように言葉遊び的にマイナスの言葉をプラスに書き換えていくのは間違っていないようである。セルフトークの転換は実際に効果があると明記されているのは心強い。
◆私たちは、アスリートは簡単にフロー状態に入れるかのように思いがちだが、本書を読む限りではオリンピック選手であっても心の中のネガティブトークと日々戦っているのである。セルフトークを減らすことも、ゼロにすることも難しいのであれば、結局一番効果的な方法は「言葉遣いに気をつける」ということなのだろう。
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