アービンジャーインスティチュート(著)
緑の表紙の【自分の小さな「箱」から脱出する方法】の続編。
前作ではまるで神様のように描かれていたルー・ハーバートの覚醒への道が語られている。
過去に遡り、役員が立ち去ろうとしている危機的状況から物語は始まる。公私ともに問題山積の中、麻薬で逮捕された息子の更生プログラムに参加するためアリゾナ砂漠を訪れたルー。
そのルーが如何にして箱から脱出したか。いや、箱からでるのは簡単なのだ。如何にして箱の外に居続けるのか。セミナーで指導者から暴君と言われ自分の姿が見えてきたルー。人間関係のテクニックは心の平和がなくては効きめがないことを学んでいく。自分は正しいと信じている状態から変貌していく過程が痛々しくもあり共感できる点でもある。
まずこのアリゾナのセミナー、キャンプ・モリアでルーと妻のジャロルは何を学んだか。それは息子だけではなく自分たちが変わらなければならないということ。互いに相手の弱点をついてやり込めようとする家族関係から抜け出す必要がある。
次に二人は「変化のピラミッド」で変化について学ぶ。
ピラミッドの大きい下の部分は「正しい方に向かうように手助けする」
上の小さい部分は「間違った方に向かっていることに対処する」
より多くの労力を正しい方に向かうように注力するのが大切なのである。
緑本にも書かれていたが、まずは自分が箱から出ること。箱の中からどんなに良い事をしてみても相手には届かないことを忘れずに、自分自身が平和な心を獲得する。それから他者との関係を築く。影響力を持つ。他者からもいい情報を得るためさらにいい関係を築いていく。次は謙虚に聴く、知る。ここまで来てやっと教える、伝えるが出てくる。
最後が正す。これは間違った方へ向かっていることに対処することである。
なんだか難しいなと感じるが、一番大切で一番早急にしなければならないのは、心の状態がか敵対的かを考えること。他者を人と見るか物とみるか。
他者に対して敵対的だと反論や講義を十分考慮することができないため、自分が生きづらくなるような振る舞いをしてしまう。これは戦略が悪いのではなくあり方の問題。いったん歯車が狂うと堂々巡り、悪循環になって互いに相手が嫌がる行動をとるようになる。
ここまで読んで、なんだかブルーになった。心当たりがありすぎて悲しくなってくるが、自分の正当化をしっかり見ていくことで箱から抜け出せば大丈夫なのだと考えて読み進んだ。
次は箱を4つの種類にわけて説明している。
優越感を抱く(優越の箱)
自分には当然の権利があると考える(当然の箱)
劣等感を人間関係の言い訳にする(劣等感の箱)
人からどう見られるか気にする(体裁の箱)である。
特に優越と当然の箱は難しい。私達は努力したのだから人生を謳歌しても良いではないかと思いがちである。
「相手が裸足だったら自分も靴を脱ぐ」という表現でそのあたりの難しさを乗り越える知恵が紹介されている。
人は無理やり変えられない。だが変わろうという気にさせることは出来る。箱は他者との関係性の比喩に過ぎない。ある人に対しては箱に入っているが、別の人に対しては箱の外にいることもできる。解釈も自由自在であり箱に入ることも出ることも意外と簡単なことなのだ。
多くの啓発書や心理学が他人は変えられないと教えている。アービンジャーの特徴は決して変えられないものではないが、箱の中から他人に影響は与えられないと主張している点だと思う。
自分の言動を振り返るとやり切れない思いになることもあるが読後感は爽やかである。
前作ほどのインパクトはないがより深い学びがあるので、ぜひ緑本と合わせて読んでほしい。ちょっとタイトルが怪しい感じがして最初は手に取るのを躊躇したが、しっかり真面目な本なのでご安心を。
アービンジャーから4冊出ている関連本の中で緑本【自分の小さな「箱」から脱出する方法】は基本編。【2日で人生が変わる「箱」の法則】は更に複雑な箱が出てくるのでまずは緑本を読んでからのほうが良いかもしれない。
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