2023/05/26

気持ちを切り替える方法 3冊 プラス 1 


 その

自分自身に三人称(自分の名前)で語りかける。客観視することで問題と距離を取る。




Chatter(チャッター)

「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法

 イーサン・クロス著

 




内なる声は常に存在して私達の助けとなっているが、一番必要とするときに限って暴走する。

その暴走を止めるにはどうしたらいいのかというのが本書の目的。

 

近年の研究で、苦痛を感じているときに内省しても有害無益であることが明らかになっているとのこと。思考によって思考が救われないことが多い。循環するネガティブ思考と感情が生み出すチャッター(頭の中のしゃべり声)は私達の人間関係や健康を危険にさらす。

問題との心理的距離のとり方の研究でもあるが、しかしこれはなかなかに難しい。頭の中のひとりごとを追い出すためにゾーンに入るという方法もあるが一流のアスリートでも意識してゾーンに入るのは難しいとのこと。

 

前半は著者自身が脅迫状を受け取ったときの恐怖体験や数々のエピソードが語られていて引き込まれたが、後半で失速の感あり。

ろう者が手話を使っているときの脳システムや独自の内的言語で自分自身を相手に語る手話の解説もある。

 

実際にこの方法を試すか否かという問題よりも、頭の中のしゃべり声に関するエビデンスや考察は非常に面白い。

 

 

 

その

痛みや不快な感情に居場所を作ってあげながら、現在この瞬間に起こっていることに集中する。

 


幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない

 

ラス・ハリス著

 




脱フュージョンが最初のテーマになる。フュージョンとは思考と真実が混ざって一つの状態になっていること。この状態から抜け出すために「私はだめな人間だ」という思考を「私はだめな人間だと考えている」に変えてみる。思考がネガティブな物語を語り始めたら「情報をありがとう」と感謝する。思考は単なる物語なので、その物語は役に立つ物語かどうか判断する。など方法は多数書かれている。

 

次に拡張(不快な感情に居場所を作ってあげる)→接続(いまこの瞬間に集中する)→観察する→価値の確認→目標に向かって行動する。という順番で説明が続く。

 

印象に残ったのは接続の項目で集中を妨げる思考をやり過ごす方法である。現在に繋がり判断を加えることなく起こっていることに意識を向ける。自分の肩や腕や足の動きに意識を向ける。私は家事をするときなどに、自分のしていることを心の中で言いながら行う「実況中継」という方法を実践している。これは本書で解説している接続に似ている。決して間違った方法ではないことがわかって安心した。

 

 

その

そもそも反応しない。

 


反応しない練習

草薙龍瞬 著

 

 





初読は8年前。この本も何度も読み返している。いつの間にかベストセラーになっていて世間でかなり評判になっているらしい。Youtubeで解説や要約の動画を出している人も多い。


本書の説いていることは簡単明瞭だが実行は難しいのかもしれない。反応しないこと、うっとうしい相手から距離をおくこと、確かめようのないことは確かめないこと、相手の言動の正誤を判断する前に「ただ理解する」という姿勢でいること。大まかな内容はこんなところであるが、著者がすべての根幹と考える「妄想」の概念を理解したうえで読む必要がある。自信家も自信がない人も妄想に囚われている。いつのまにか参戦したバーチャルな競争から降りることである。たしかにこういう考え方で生きていくと勝ち負けにこだわらなくなって楽になるだろうと思う。

 

わたしはあなたが差し出すものを受け取らない。あなたの言葉は、あなただけのものになる。そのまま持って帰るがよい。反応しないことが最高の勝利である。


 

 

最後にオマケ。これは著書ではないが、芥川賞作家の辻仁成さんが語る「嫌な気分から脱出する方法」3つ。

まず1つ目は、嫌がらせが飛んできたら、即座に「バリアー発動!」と心の中で叫ぶ。

次に2つ目、時を経て思い出す嫌なことは、一度机から立ち上がって、「消えろ」ボタンを押して消す。これは、リアルに電気のスイッチなどに消えろと書いたシールを貼って押すということ。

そして3つ目、トイレットペーパーに書いて流す。トイレットペーパーは薄いので書きにくい。いろいろと工夫して心を込めて書く。そして必ず「大」で水を流す。流し終わったら、必ず便座の蓋をしめる。さすがは作家さんだけあってこんな時も言葉遊びを忘れない。物理的に水に流す行為を行うのである。

私は(実際に試してはいないが)3つ目が気に入っている。マジックペンは書きづらいので筆ペンで書いているらしいが、フランス在住の辻さんにとって筆ペンを買うこともそれなりに労力が必要なのではないかと思う。辻さんほどの人でもここまで努力して「いまこの時」に集中しようとしている。そのことを知って私は癒やされた。勝手な解釈だが、自分でも笑ってしまうようなことを真面目にやることがポイントなのではないだろうか。

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